給食も食べ終え、皆それぞれ好きに過ごしていた。

そんな騒がしかった教室が雅治の叫び声と机が倒れた音で一気に静まり返った。

雅治に押された反動で机と椅子が倒れ、女の子が一人床に尻餅をついて唖然とした表情で雅治を見上げていた。その横で雅治の彼女が今にも泣き出しそうに立っている。


「………」

「………ま、仁王…く?」


雅治は無言で側にいた女の子達を睨み付けると、不機嫌な顔のまま私の前までやって来た。

声を掛けてみても返事はなくて、いきなり私の手首を掴んでそのまま教室を出ていく。

校舎を出ても雅治の足が止まる事はなくて、ランドセルを置いたままだとか上靴のままだとか、そんな事を気にしながら私は雅治と学校を後にした。












連れて来られたのは雅治の家だった。

雅治のお母さんは急に帰って来た私達に驚いていたけど、雅治の様子から察したのか何も言わなかった。


「ねぇ、ま……」


雅治の部屋のドアを閉めた途端、ギューッと力一杯抱き締められ、私の言葉が途切れた。

微かに震えている雅治の体。


「――……んで」


小さな声で雅治が呟く。その言葉を聞いた瞬間、私がどれだけ雅治を傷付けたのかが分かった。


「俺から離れんで」

「俺以外の奴に笑わんで」

「名前が居らんと、どうしていいか分からん」





「俺を…一人にせんで」





遂に泣き出した雅治を抱き締め返して、私は何度も“ごめん”と雅治が泣き止むまで言い続けた。






KISS kiss xxx:09




(うっわぁ…、泣いてる仁王先輩って)(想像出来ねぇ…)(そう?俺にしたらよくそこまで我慢出来た事の方が驚きだけど)(っ、そうじゃろ!?)

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