いつも家に帰る時間になっても現れない雅治を、私は教室で待っていた。

別に先に帰ってもいいのだけれど、後々面倒くさい事になるから却下した。

待ちくたびれた私の前に、クラスメートの女子が数人やって来て口を開いた。


『仁王には彼女が出来たんだから、もう一緒に帰ったり話したりしないで』

『仁王はもうその彼女と先に帰ったんだから』


それはもう得意気に…。

バカじゃないの?とは思ったが、それを口にする事なく、あっそ…とだけ返事して教室を出ていく事にした。

いつも2人で帰る道を1人で歩く。

なんだかそれが妙に寂しく感じた。けれど、それと同時にいい機会だとも思っていた。

クラスに馴染もうとも友達を作ろうともしなかった雅治の世界が少しでも広がったんだ。

いつまでも2人一緒にいれるハズがない。

こんなにも突然その時がやって来るとは思わなかったけれど…。


「…私も雅治離れしなきゃ、ね」


ランドセルをもう一度背負い直して、家へ駆け出した。




KISS kiss xxx:08




(…彼奴等、名前にそんな事を言うたんか)(仁王先輩、顔が怖いッス…)(でも、仁王が安易にその子付き合ったりしなかったら、名前がそんな事を言われる事もなかったのにね、フフッ)(確かに、幸村君の言う通りだな)(そうッスね)(………うぐっ)

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