深夜、なんとか任務をこなした私は報告書を持ってボスであるザンザス様の執務室へと向かって歩いていた。

こんな時間に持っていく必要があるのか?と思うが、終わり次第直ぐに持っていかなくてはボスの機嫌を損ねる事になってしまう。

欠伸を噛み殺しながらボスの部屋の前まで行けば、不意に扉が開いた。


「げぇっ?!」

「・・・何よ」


中から出て来たのはスクアーロだった。(彼も任務の報告に来たんだろう)彼は私の顔を見た瞬間、気まずそうに表情を歪ませる。


「・・・どいて」

「お"ぉい、ちょっと待てぇ」


なんでスクアーロがそんな表情をしたのか直ぐに分かった。だからといって私には待つという選択肢はない。

扉のど真ん中に立つスクアーロを無理矢理退かせて扉をノックしてから開いた。


「報告書を持ってきましたー」


デスクの上には艷めかしい裸体の女と、その女に覆い被さる服を着たままのボス。

女はボスからの愛撫に夢中になってるせいか、私の存在等全く気付いていないらしく、今も耳障りな嬌声を上げ続けている。

その女の肩越しにボスと目が合った。

私は嫌味ったらしくボスにニッコリと笑ってから、報告書を置いて部屋を出てやった。


――ムカつく。


別に私はボスの女というワケではない。が、上司と部下という関係以外に肉体的な関係を持っている。いや、無理矢理持たされた。

それ以来、私には【ボスのお手付き】という肩書きが勝手に追加され、寄ってくる男が全くいなくなってしまった。

それなのに、ボスは他の女と・・・。

そういう関係の女が私だけだなんて思っていない。けれど、私の目が届く所でそういう事をするのが許せなかった。

八つ当たりも兼ねて、部屋の前に立っていたスクアーロの髪を引っ張っりながら、彼の部屋まで歩く。


「だから言っただろうがぁ」

「煩い!」


 ◇◆◇


スクアーロの部屋で勝手にワインを取り出して、飲みだした私に、スクアーロはあからさまに溜め息を吐いた。


「ボスのせいで、私は他の男とシてないってのに・・・、ボスだけズルイ!」

「・・・怒るのはそこかぁ」

「当たり前でしょっ!」


ドカッと勢いよくソファーに座ってから、グラスになみなみとワインを注ぎ、一気に飲み干す。


「・・・というワケで、(憂さ晴らしに)付き合って」

「はぁ"?!」


私は隣に座るスクアーロの顔を覗き込んで、ニヤリと笑った。


「大丈夫、ちゃんと気持ち良くしてあげるから」

「・・・名前、お前何言ってんだぁ!もう酔った・・・っ?!」


状況が飲み込めず戸惑っているスクアーロの唇を私の唇で塞ぎ、そのままくちゅくちゅと舌を絡める。

何度となく口角を変えながら、右手でスクアーロのシャツのボタンを外し、もう片方の手で下を撫でるように愛撫していく。

唇から首筋、露になった胸元へと舌を這わせ、ベルトを外しジッパーを下ろすと、ソレは既に下着の中で窮屈そうに膨らんでいた。

下着越しにソコへとチュッと唇を落とせば、


「・・・っ、あ"ぁ・・・」


荒い呼吸の中から、普段の彼からは想像出来ない程の甘い声が返ってくる。


――可愛い。


素直にそう思えた。

ボスが相手だと私はいつも翻弄されて、悔しいことにこんなふうに相手の反応を楽しむ余裕なんて全くない。

未だに理性と本能の間で葛藤しているスクアーロに止めを刺す様に、私は下着の中からソレを取り出しす。


――ドガッ


「「・・・・・・・・」」

「・・・・・・・」


ようやくスクアーロの理性がぶっ飛んだらしく、反対に私が彼に押し倒された時、この部屋の扉が跡形もなく消し飛んだ。


「・・・何しに来たの、ボ「ぐはっ!!」・・・」


憤怒の炎を宿したボスが、そこに仁王立ちしていた。部屋一面に焼け焦げた匂いが漂う。

私達2人を睨み付けながらドカドカと歩いてきたボスは私を組み敷いているスクアーロを蹴り飛ばし、私をソファーから引きずり下ろした。


「・・・何してやがる」

「何って、ナニでしょ?」


服が乱れたままの私は、ボスに担がれてスクアーロの部屋を無理矢理後にさせられた。

私を振り返りもせず、怒りのオーラを纏いながらも歩き続ける。


「そういうボスこそ、ナニの真っ最中だったんじゃないですか?あの人はどうしたんです?」


そう問いかけてみても、返事は返ってこない。


「あぁ、私が邪魔しちゃったからそんなに不機嫌なんですね?仕返しに今度は私の邪魔したんですか?私に構わずあの人の所に戻ったらどうですか?」

「・・・で、テメェは・・・」


ボスは言葉を濁した後、チッと舌打ちをした。

私も私だけど、何も言わないボスにだって問題はある。

お互いに曖昧な関係だど自覚しているくせに、それを明確にしようともせず、こうして自分の首を締める事になってしまう。


「・・・で、どこに連れて行くつもりなんです?」

「テメェの部屋だ」

「はぁ!?意味が分かりません」

「オレの邪魔したんだ、それくらい当然だろうが」


覚悟しろよとニヤリと笑って私のお尻を鷲掴み揉み始めたボス。

そういう事ですか、そういう事なんですね?

私の部屋はもう目の前だ。

素直になれない私達の曖昧な関係は、これからも続くらしい。






<オマケ>


「・・・どうすんだぁ、コレ」


スクアーロは迫り上がったままの欲望をどう処理すったままの欲望をどう処理するべきかと溜め息を吐いた。

そしてまた、ザンザスの執務室では真っ黒に焦げた残骸を処理班が掃除している真っ最中だった。





長くなりすぎたので色々と削ったら、ただスクアーロが可哀想で間抜けなだけの話になってしまいました。


 090614





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