グスグスと情けなく泣く俺を、名前はやさしく抱き締めてくれた。 俺はすがるように名前の背中に腕を回した。 「・・・なぁ、なんで?俺のどこが悪かったんだろ?」 「俺なりに、大事にしてたつもりだったんだ」 「なのに・・・浮気されて、フラレた」 名前の腕の中で、俺は泣きながらそう呟く。そんな俺の言葉に名前はただうんうんと頷き、そして慰めるような頭を撫でてくれた。 自然と俺の口が弧をえがく。 彼女にフラレたのはホント。 (別に好きなんかじゃなかったケド) 浮気されたのもホント。 (彼女にワザと冷たくして、ダチに彼女を慰めるように言ったら、アッサリと彼女はそのダチに落ちた。んで、今ごろはダチにまでヤり逃げされてる) 全部俺が仕組んだ事で、これっぽっちも傷ついちゃいねぇ。 「俺って、そんなに駄目な男なのかなぁ・・・」 「そんな事ない。赤也はカッコイイよ。幼なじみの私が保証する」 ――"幼なじみ" 俺と名前はそんな関係で、そんな言葉を口にしてるくせに俺の事を男としては見てくれない。 1つ年上の名前は中学に入ると次第に俺と距離を置き、その上、仁王先輩なんかと付き合い始めた。 それを知った時から、俺はどっかが壊れたんだ。 でたらめな愛のうた 元カノには感謝してるよ?あの女がいたから、今こうして名前は俺の傍にいてくれる。 ――そう、彼氏なんかよりも俺を優先してくれるんだから。 だから俺は、何度もカタチだけの彼女をつくるんだ。 title:虫喰い 090730 |