「なぁ、彼女出来たって・・・ホンマなん?」

「ん?・・・もう噂になってんの?女子って怖いわー」


否定する事なく、見とれてしまう様な笑顔をみせて返事をしたこの男。

白石蔵ノ助。

私が前から好きで好きで仕方がない男。


「・・・今日は部活ないん?珍しいやん」

「せやから、部活がない今日くらいは“彼女”と一緒に帰ろうと思ってんねん」


私が動揺しているのに気付いてるくせに、平気でこの男はこんな事を言う。


「彼女、めっちゃ可愛いらしいやん」

「そうか?俺は、名前の方が可愛いと思うけど」


机に頬杖をついて、そんな酷い事をサラッと口にする。



自分がフッた相手に、ようそんな酷い事が言えるもんやな・・・。



そんな言葉を言ってしまいそうになる。

泣きそうになってしまうのを必死に我慢して、相変わらず綺麗に微笑んでいる白石の顔を睨んだ。

でも、私がそんな事をしたって、この男は顔色一つ変えない。

動揺さえしてくれない。


「あっ、“彼女”からメールきたわ。・・・んじゃ、また明日」


俯いている私の横を、何事もなかったかの様に通り過ぎる。

気まぐれに優しくして、気まぐれに冷たくする。

いつまで経っても、私の恋はくすぶり続けて、消えない。


「・・・自分みたいな男、



 大嫌いや・・・」


独りぼっちの教室で、いなくなった人に向かい、そう呟いた。




     そ
    れ
     だ
    け
     を
   吐きだして




「アホ、思ってもない事を口にするもんちゃうで・・・なぁ、名前」



 title:揺らぎ

 090823




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