私に覆い被さる愛しい人の表情が見えない。

耳元から聞こえてくる彼の熱い吐息。

彼の手は私の胸元を這うように動いている。


「―――…」


熱の込もった声で彼の口から言葉が溢れた。

そして、ふと考える。

私の名前はそんな名前だったのだろうか…、と。

体が熱くなるにつれて、私の頭の一部が徐々に冴えてくる。


触れないで。

優しくしないで。

求めたりしないで。


私の腕は彼を離さないとばかりに、彼の背中へと回されているというのに、心の中は彼を拒否する言葉で一杯だった。

彼と夜を共に過ごす度に、私は彼の表情が見えなくなってしまった。


「―――…」


また彼が愛しそうに告げた。

ねぇ、教えて下さい。

それは一体誰の名前なんですか?

愛しい貴方は誰を求めているのですか?

貴方には私が見えているのですか?


「―土方、さ…」


私の声は何時になったら、愛しい貴方に届くのでしょうか?










0301
リハビリ中。





- 4 -

[*前] | [次#]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -