私に覆い被さる愛しい人の表情が見えない。 耳元から聞こえてくる彼の熱い吐息。 彼の手は私の胸元を這うように動いている。 「―――…」 熱の込もった声で彼の口から言葉が溢れた。 そして、ふと考える。 私の名前はそんな名前だったのだろうか…、と。 体が熱くなるにつれて、私の頭の一部が徐々に冴えてくる。 触れないで。 優しくしないで。 求めたりしないで。 私の腕は彼を離さないとばかりに、彼の背中へと回されているというのに、心の中は彼を拒否する言葉で一杯だった。 彼と夜を共に過ごす度に、私は彼の表情が見えなくなってしまった。 「―――…」 また彼が愛しそうに告げた。 ねぇ、教えて下さい。 それは一体誰の名前なんですか? 愛しい貴方は誰を求めているのですか? 貴方には私が見えているのですか? 「―土方、さ…」 私の声は何時になったら、愛しい貴方に届くのでしょうか? く 女 の 唄 0301 リハビリ中。 |