名前は言いたいことを言い終えて、店を出て行った。再び一人きりになった俺は氷が解けて薄くなった酒を一気に飲み干す。 酒の味は全く感じられなかった。 名前が言うには、名前は俺に振られてやけ酒呑んで酔い潰れるという日々を送っていたらしい。そんなある日、見回りしていた彼奴と遭遇した。酔っていた勢いで名前は自分の胸の内を洗い浚いぶちまけ、そして翌朝、真選組頓所の一室で目覚めた名前を待っていたのは、彼奴からの告白だったそうだ。 その時は断ったものの、彼奴の押しに負けてしまったらしく名前は彼奴と付き合い始めた。 彼奴は俺と違って、名前とちゃんと向き合っていたんだ。 強がる名前を許さず、名前が素直に本心を語るまで腕を掴み離さなかった。 名前は話をそらすことも、逃げることも出来ず、自分の胸中を語るしかなく、どんなに時間がかかろうともちゃんと最後まで名前の話を聞いていた。 『私が話終えるとね、いつもトシがグシャグシャって頭を撫でてくれたんだ…それが決め手かな?』 自分の左手に輝くシルバーリングをいとおしそうに撫でながらそう話した名前に、俺は何と言えばよかったのか…。 つなぎ目の命日 title:虫喰い様 リハビリ中… |