「ところで、こんなとこで俺と二人っきりなんて大丈夫なのかよ?」

「大丈夫だよ。トシにはちゃんと許可を貰ってますから」


今、信じられないことに名前はあのニコチンマヨラーオタクと付き合っている。初めてその事実を知ったのは彼女とのデート中のことだった。町で彼奴と手を繋いでで歩いていた名前を見かけて、向こうも俺達に気付いたらしく俺達の方へやってきて「付き合っている」と告げた。

俺が見たことのない笑顔彼奴に見せる名前。

頭の中が真っ白になり、時が止まってしまったようだった。そして気付く。俺が本当に見たかったのは名前のこんな笑顔だったんだと。

彼女に名前の面影を映していたことに。だから、彼女といても満たされなかったんだ。


「へぇ〜、あの多串君がねぇ。珍しいこともあるもんだ」

「多串君って…。あのね、そんな話がしたかったんじゃないのよ」

「どんな話があるっつーんだ?」

「…私、結婚するの」


グラスを落としそうになった。へぇ〜、なんて気のない返事をするのが精一杯だ。


「これも、銀時のおかげかな?」


動揺する俺に名前は気付くことなく続ける。そのことに安堵しつつも、以前の名前ならどんなに些細な変化でも気付いてくれていたのに…とやるせなさが俺を襲う。


「銀時に振られて…、その時に本気で変わりたいって、可愛い女になりたいって思ったんだ」







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