「あっ・・・あぁん・・・」

「・・・・・くっ」


俺様の下で喘えぐ女の中に熱を放って、グッタリと身を横たえた。

といっても、この女は俺様の彼女でも何でもない。ただのセフレ。名前すら覚えてはいないが、まぁいい体をしてるから以前からそういう関係だったりする。


「じゃあね、佐助」

「ん〜」


その女は俺様の頬に口付てから保健室を後にした。そいつは他の女みたいに終わってからベタベタしてこないから楽だ。


 ◇◆◇


スッキリして教室へと鞄を取りに戻る。あ〜面倒だなどと思いながら、もう誰もいない廊下を歩いていた。

教室の前まで来ると、中から誰かの話声が僅かに聞こえくる。こんな時間に誰だ?と思いながら中をそっと覗いてみれば、そこには旦那と名前ちゃん。

名前ちゃんは俺様の彼女だったりする。

彼女に一目惚れした俺様は長い間アタックし続けていた。そしてそのかいあって、最近ようやく彼女と付き合い始めた。

それなのになんで他の女と・・・と思われるかもしれないが、本命にはなかなか手が出せないのと―――まぁ、その手の誘惑に弱いせいだ。

悪いなぁーと思いながらも、2人の会話を盗み聞きしようと耳を澄ませる。


「名前殿は佐助と・・・その・・・どうして」

「ん?頼まれたから」

「は?」
(は?)


俺様の心の声と旦那の声がハモる。ちょ、ちょっと待って。頼まれたってどういう事?え?誰に?ドアの前で一人混乱している俺様をヨソに名前ちゃんは続ける。


「佐助が私に構うのは、今までの子と違って相手にされないからムキになってるだけ。だから、付き合う事になればもう構ってこないだろうからって・・・佐助のセフレの女の子から頼まれね」


淡々と続ける名前ちゃんの言葉に、俺様の頭は真っ白になる。

確かに名前ちゃんと付き合うまでは、暇さえあれば名前ちゃんに会いに行ってたけどさ。(セフレはほったらかして)それよりも、名前ちゃんと俺様のセフレって繋がって・・・?旦那にとっても予想外の答えだったらしく、目を見開いて驚いている。


「でも、それだけが理由じゃない」


名前ちゃんの真っ直ぐな瞳が旦那に向けられる。


「恋愛に疎い誰かさんが、佐助と付き合う事で私の事を女の子として意識してくれるんじゃないか・・・って思ったの・・・」

「名前・・・殿・・・、しかし佐助、いや、某は・・・」

「今も佐助はセフレの子と一緒に保健室にいるハズだよ。彼女からメールもらったし・・・、佐助は私の事を本気で好きなワケじゃないんだよ・・・。幸村は・・・そんな私の事・・・軽蔑す」


名前ちゃんが言い終わる前に、旦那が名前ちゃんを腕の中に閉じ込めた。名前ちゃんもそれに応えるように、旦那の背に腕を回す。

俺様はただ呆然とそんな2人を眺める事しか出来ない。

その間にも、旦那は名前ちゃんの唇に自分の唇を重ね、次第に旦那の唇は名前ちゃんの首筋、鎖骨、胸元へと下りていく。

そんな中、名前ちゃんと視線が交わった。

ビクッと俺様の体が震える。

けれど、名前ちゃんは俺様から視線を反らす事もせず、胸元にある旦那の頭を抱きしめたまま口端を上げた後、ゆっくりと口を開いた。そして・・・、


『      』



自業自得
(彼女の唇が俺様にそう告げた)



うん、確かにその通りだよね。俺様は本気だったんだけど名前ちゃんにそう思われても仕方ない事したし、俺様には名前ちゃんを責める権利なんてない。

その日、俺様は鞄を教室に置きっぱなしにしたまま家に帰った。

なんか無性に泣きたくなった。



090506



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