結局のところ、 | ナノ


くだらないと思った。2組のあの子が好きな子を盗ったとか、私が先に好きになったとか。恋に優先順位などない。そんなに誰にも取られたくないなら、早く“此れは私の彼氏です”とラベルでも貼ってやればいいのだ。そう言うとまた告白は男がするものだとか、今の関係が終わるのが嫌だとか、本当に、くだらない。そもそもの話、人はものではないのだ。彼女たちは只、彼氏というアクセサリーを付けて自慢をしたいだけなのだ。


「あんたもそのアクセサリー候補の一人だとはねぇ、モテモテね」
「はぁ?何言ってんの?」
「独り言よ」


何気なく外へ向けていた視線を前に戻すと、目の前で菓子を齧る準太の唇の左横に食べ滓が付いていて、なんとも滑稽だ。くっくっとなるべく声に出さない様に笑ったがどうやら彼には暴露てしまっているようだ。眉間に皺が寄り始め、右手のペン回しの速度が速くなっていく。彼が苛ついている証拠だ。


「なぁに笑ってんだよ」
「ふ、食べ滓が、ふふっ」
「どこ?」
「そこ…くくっ」
「ここ?」
「ちが、あははっ」


一向に取れない食べ滓はまだ準太にしつこく付いていて、まるで彼を執拗に欲しがる彼女たちの様で益々笑えた。準太は痺れを切らし私に取れ、と要求してきた。機嫌の悪くなった準太のこの表情は、私の悪戯な幼心を擽る。この滓を舐めとったら彼はどんな顔をするだろうか。その出来心が生まれたと同時に私の身体は動いていた。舌に乗っかった滓をごくりと唾と一緒に飲み込むと、目の前には、瞳をぱちくりさせた準太の間抜けな顔。してやったり、そう思った瞬間、準太の唇がゼロ距離にあった。


「っふぅ、」


口内に侵入してきた舌に追いつけず、思わず息を吐くと彼はゆっくりと離れていった。唇と唇が銀の糸で繋がれて、窓から射す沈む夕陽の橙の光が煌めいている。


「御返し、な」


そういって逸らした顔は、耳朶まで真っ赤に染まっていた。高瀬準太に夢中な女子達には悪いが、どうやら彼は私にお熱のようだ。優越感に浸る私もまた、くだらない女の一人なのだった。






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