At the end of the world | ナノ



例えば明日世界が終わるなら、人は何を望むだろうか。助けて欲しいと神に生を懇願するのだろうか。私ならきっと、静かに彼の隣で眠らせてほしいと頼むだろう。人間の命は遅かれ早かれ終わりというものが来るのだ。それがもし明日だとするなら、私は彼と離れたくない。一人にされたくもないししたくもない。ただ、二人で静かに眠りたいのだ。


「同感だね」


優一さんはベッドの横にあるスタンドライトの灯りを消しながらそう言った。布団の中へと戻ってきた彼の身体は外気に触れて少し冷たくなっていた。暖めようと手に触れると、彼は優しく抱き寄せ私は優一さんの広い胸にすっぽりと埋れた。彼との距離を限りなくゼロにしたくてもっと身を寄せると、優一さんはより強く私を抱きしめる。


「君がそばにいてくれたら、僕はそれでいい」


暗闇に慣れた瞳が捉えたのは、優しく笑う優一さんだった。愛おしくて唇に少し触れると、額へ、頬へ、唇へ、キスの雨が降ってきた。それは暖かくとても柔らかなものだった。くすぐったいよ、と身じろぐと景色が急に反転した。視界は優一さんとその後ろの天井に埋め尽くされる。


「けれど今はまだ生きているから、」
「君の暖かさを感じたいな」


だめ?と聞くその右手は既に私の腹を弄っている。なんだか可笑しくて笑ってしまう。幸せとはこんな時にも感じることができるのだ。


「だめなわけないじゃない」


しっかり堪能してね、そう言うと優一さんはまた優しい笑顔を見せた。


例えば明日世界が終わっても、私は彼とずっと一緒だろう。それが天国でも地獄でも何も存在しない場所でも、私たちが一緒なら、それでいいのだ。




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テーマ「人外ファンタジー」
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