底なしの愛を | ナノ



久しぶりに会いにきたと思いきや、いきなり抱き締めるなんて卑怯だ。文句の一つでも言ってやろうと考えていたのに、そんな熱い唇で呼吸まで奪われたら、彼に身体を委ねるしかない。


「…お風呂」
「え?」
「お風呂入ろう」


長いキスの後、彼は鼻と鼻がぶつかり合う距離でこう言った。確かにお風呂は丁度湧いているが、果たして今が入るタイミングなのだろうか。中途半端に期待させられた今の私は、口を薄っすら開けてとても間抜けな顔をしているのだろう。そんな私を余所目に、彼は私を軽々と抱え脱衣場へと向かった。




△▼△





「ごくらく、ごくらく」
「士郎おっさんみたいよ」


髪が頬へ張り付き、輪郭から水滴が落ちる。背中に感じる士郎の鼓動が心地良い。もたれ掛かると斜め上には彼の整った顔、最後に会った時より頬が痩けている。痩せた?、と聞くと君は少し肥ったね、と湯の中で私のくびれを優しく摘まんだ。余計なお世話と言わんばかりに近くにあった彼の喉仏に柔く噛み付くと、いてて、と言いながらも私を抱く力を強めた。


「幸せだなぁ」


ぽつり、と呟かれた言葉はエコーがかかり私の耳にゆっくりと入っていく。徐に脚をを動かすと湯船に小さな波がおきた。同じ事を考えていたことが嬉しくて、両足を抱いて膝に顔を埋めくすくすと笑っていると、彼は私の全身を包むように抱き直した。士郎の身体は思ったよりも大きい。そして、思ったよりも暖かい。


「君といると生きてるって実感するよ」


首元に士郎の髪が触れてくすぐったい。皮膚に柔らかな痛みを感じた。どうやらキスマークを付けられたらしく、白い肌に紅色の跡のコントラストが美しい。じゃあずっと離さないでね、と言ったら士郎はまた、呼吸を奪うようにキスをした。





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