帰り道、ユージオと。
※小説のネタバレががっつりあります。
ユーキリ。キャラ崩壊はない、と思います。
付き合ってません(重要)。
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SAOファミリーは、キリトの知らないところでこう言われている。
「キリト親衛隊」と。
SAOに関わったもののほとんどが、キリトのファンになる。
そして、特に交流の深かったものは、高確率でキリトに恋をする。
キリトは、そんな事実を知らずに、今日も仕事をこなすのである。
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▼クエスト:帰り道、ユージオと。
「ふあ〜」
打ち上げパーティが終わり、ふわふわとした雰囲気の中で、自分の家に帰ろうとしていた俺、キリト。
あくびをひとつついて、へにゃりと笑う。
「楽しかったな〜、打ち上げ!」
そう言って笑いながら、打ち上げ会場から抜けようとすると、後ろから「キーリトっ」と声をかけられる。
「お、ユージオ」
「ふふ、一緒に帰らない?」
「いいのか?」
「もちろん」
ユージオは俺の大親友で、小さい頃からずっといっしょに育ってきた幼馴染だ。
そして、もうひとりの幼馴染、アリスも俺のいい友人だ。……ん?
「あれ?アリスは?」
「今日は一足先に帰るって。ああいう人がいっぱいいるところ、苦手だから」
「そっか」
俺と、ユージオとアリス。この3人が、次のSAOの「ALICE編」の主役だ。
そして同時に、幼馴染の共演でもある。
夢だった3人一緒の舞台に立てるということで、俺たちはとても喜んでいた。
今日はユージオとアリス、そして俺が、GGOのインタビューの後、3期の意気込みを答える別番組の収録があったのだ。
その後、俺は食事を取ったり他の共演者や裏方の人たちに挨拶して回っていたため、合流できずにいたのだった。
「ごはん食べた後だから、眠いんでしょ」
さっきのあくびを聞かれていたらしい。
俺は「ん」と頷くと、ユージオの肩にもたれた。
「な、送っていって」
甘えた声を出してみると、ユージオは苦笑して「仕方ないなぁ」と言って歩き出した。
俺にとんでもなく甘い幼馴染は、いつもこうやって俺を部屋まで送り届けてくれる。
普通ならばここでタクシーなり車で送り届けられたりするのだろうが、俺たちのすむ場所はここからそんなに遠くない。
一度タキシードから着替えて、顔を隠せばバレることなく家に徒歩で帰ることができるのだ。
ちなみに俺は、現場からすごい近いマンションに1人暮らし。
ユージオとアリスは俺のマンションの隣にあるちょっとした高級マンションに住んでいる。
俺と違う所に住んでいる理由を、アリスは前に「ユージオが変な気を起こさないために別々にしてるんですよ」って言ってたんだけど、どういうことなのかはわからなかった。
「あれ?キリト、お酒飲んでないのに顔赤いね。どうしたの?」
「んー?そうか?わかんないな」
「……あ、もしかしてあのチョコレート食べた?」
そういえば、今日のデザートの中に「ボンボン・オ・ショコラ」っていうのがあった気がする。
それでなんか中からとろっとした甘いソースが……。
「それ、お酒だよキリト。君、何個食べたの?」
「ん〜、美味しかったから5個ぐらい……?」
「よっぽど強いお酒だったのか、わざとやってるのか……」
ユージオのため息が聞こえて、俺はふふーんと笑った。
「いいんだよ、車乗るわけじゃないし」
「未成年がなにを言ってるんだい」
「だーって知らなかったんだもん。ユージオが部屋まで送っていってくれるから、平気だろ?」
俺はユージオに笑うと、ユージオは顔を赤くしながら、「僕が大丈夫じゃない……」とぼそぼそ言っていたが、俺はのんびりと聞き流した。
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さて、道中何事もなく桐ヶ谷和人の暮らすマンションにたどり着いた二人である。
ユージオにべったりとくっついていた俺だが、側から見ればマスクをしている病人をズルズルと引きずっているようにしか見えなかっただろう。
何も問題はないのだ。
「今日はゆっくり寝るんだよ。明日は久しぶりにオフなんだろ?」
「んー」
「ほら、もう。鍵貸して」
部屋の前に着くと、ユージオの肩を借りていた俺は半分寝ぼけながら鍵を取り出して、ユージオに渡した。
カードキーが認証に成功すると、ユージオがドアを開けてくれる。
ベッドまで俺を引きずり、上に雑に俺を寝かせてくれると、ユージオははぁ、と息をついた。
「ちゃんとシャワー浴びなよキリト」
「おー」
「もう、ちゃんと聞いてるの?」
ユージオが俺の顔を覗き込みながら言うので、俺はユージオをぐいっと引き寄せた。
「ユージオ、今日、泊まっていく……?」
とろんとした目でユージオに囁くと、ユージオは顔をぼっと赤くして、
「何言ってるんだよ、もう!」
と俺を引き離した。
「だって、もう遅いし。SAO組は、明日ほとんど全員休みだろ?
レギュラー番組の撮影ある人以外はさー」
「だからって、だめ。最近は変な噂だって流れてるんだよ?」
「変な噂〜?」
ユージオは、そう、といった。
「僕とキリトがあんまりにも仲良しすぎて、その、僕たちが付き合ってるんじゃないかって」
「誰が言ったんだよそんなこと〜〜〜」
「報道陣の人たちとか、マネージャーさんにも釘刺されたんだよ」
「ふーん?ま、言わせておけばいいじゃん」
俺の適当な返事に、ユージオはむっとした。
「だめでしょ、僕たちは」
「なんで?恋愛禁止されてるわけじゃないしさ」
「キリトはいいの?」
「なにが〜?」
ユージオは、目をそらしながら
「その、僕と、付き合ってるって言われて、いいの?」
俺は眠りそうな意識をなんとか保たせながら、答える。
「ユージオは、嫌なのか?」
「へっ?」
「俺とユージオが付き合ってるって言われるの、嫌なのか……?」
それだけ言い終わると、俺は眠気に抗えず、夢の世界へと意識を飛ばした。
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ユージオは、すやすやと眠ってしまったキリトを見て、苦しげに呟く。
「嫌なわけ、ないだろ。キリトの鈍感」
自分の気も知らず寝こけているキリトをしっかりと寝かせ、毛布をかけてやる。
それから、幸せそうに眠るキリトの寝顔をみて、疲れたようにため息をついた。
「……かえろう。じゃないとアリスに殺される……」
そんなこんなで、理性をふりしぼって帰った部屋で、ユージオはアリスに慰めてもらったという。
帰り道、ユージオと。
END!
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芸能界ネタほんと書いてて楽しいです。
ネタが尽きない。
キリトくんほんと何やらせても可愛い。
加筆修正:2018/06/13
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[mokuji]
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