心も体も氷づけ

 氷の女王。
今年一番人気になった映画のモデルの作品だ。
キリトに原作をすすめると、みごとに本に引き込まれた。

「ねぇキリト。真実の愛ってなんだと思う?」
「んー、やっぱり、本当にそいつのことを愛してる心なんじゃないか?」
「そうよね。私もそう思うわ」

 キリトはそういったきり、本にまた集中し始めた。
私は本を読むふりをして、キリトの顔をちらりと横目で見る。

(あぁ、なんて綺麗なのかしら)

私はそう思うと、密かにうすく口の端を持ち上げた。

(真実の愛。そうね、本当に愛している人の持つ心の話よね。
でも、それなら、私の"コレ"は真実の愛なのかしら)

 私は、キリトが好きだ。
キリトのことが好きすぎて、おかしくなるぐらいに、大好きだ。

(キリトの体も、心までも、凍らせてしまいたい。もしも私が氷の女王だとしたら、キリトを凍らせて、そしてずっと私の手元に置いておくわ。一生溶けることのない氷。綺麗な姿のまま、私の隣で生き続けるの。だってそうすれば、死ぬこともない。老いることだってないわ。私の横にいて、私から離れることだってない)

 それはなんて素敵なことなんだろう。
美しいまま生き続けて、そして私と一緒に朽ち果てる。
真実の愛が氷を溶かすなら、そんな愛はいらないわ。
でも、この思いが真実の愛じゃないなら、この思いの名前はなんていうのかしら。
ずっと一緒にいたいと思うのは、愛ではないのかしら。

「愛ってなんなのかしら」

ついつぶやいてしまった言葉に、キリトは顔を上げた。

「?哲学的だな。それとももっと簡単に?」
「……愛が何か、答えられるの?」
「んー、まあ、なぁ。難しいことは言えないけど、要するにあれだな。"相手の全てを受け入れたい"とか、"相手を幸せにしたい"ってことだろ?相手のことを一番に考えられること、なんだと思う」
「それは、アンタ自身の意見?」
「そうだな。俺は、だってさ、好きな奴の全部好きになれたら最高じゃん」

キリトの微笑みが、小説の主人公ととてもよく似ていたから、私ははぁ、とため息をついた。



「……アンタを氷の中に閉じ込めるのは、難しそうだわ」




も体も氷づけ
(キリトなら、自分で氷を溶かしちゃうだろうから)


END!
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氷の女王/雪の女王。


更新日:2015/04/06
改稿日:2020/01/24

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