夢の終わりに鐘の音

夢の終わりに鐘の音 



微甘



 学校の階段を下りていく。
先生に引きとめられて、時間がかかってしまった。
もうすぐ、菊岡と比嘉さんのバイトの待ち合わせの時間になってしまう。
あぁ、急がなくては。
 パタパタと長い階段を下りていく。
その時、キリトは階段で靴が片方脱げてしまった。
あわてていたキリトは、そのことに気が付くが焦った様子で

「あぁ、もう!急いでんのに!」

と声を発した。

「そんなに焦らなくてもいいでしょう?」

階段の上から声がして、そちらを見上げるととてもよく知った人物だった。

「こんにちは、キリトくん」
「アスナ!」

アスナはキリトの落とした靴を拾うと、階段で立ち止まっているキリトの下へ移動し、笑いかけた。

「ほら」

と催促するアスナに、キリトは困惑した表情を向ける。

「へ?」
「履かせるから、足だして」
「えっ、えと、あの」
「早く」

 キリトは頬を染めて、そっと足をアスナのほうへ差し出した。
アスナはキリトの足を取り、靴を履かせた。

「まるでシンデレラね」

 アスナはそういうと、立ち上がってキリトに微笑んだ。
キリトの顔は赤く染まり、うつむいてしまった。

「シンデレラは……アスナだろう、普通……」
「あらそうかしら。私は王子役がハマってるとおもうんだけど」

くすりと笑うと、アスナはキリトに顔を近づけた。

「私のお姫様は、いつだってキリトくんだわ」
「そこは普通、私の王子様だろう……」

 恥ずかしくなって赤くなった顔を背けながら、アスナに答える。
キリトの赤い顔を見て、アスナはゆっくりと顔を近づけた。
キリトはドキドキしながらも、静かに目を瞑った。

唇が触れ合おうとした、その瞬間──────

リンゴーン、と音がした。

「わっ」

 キリトはおもわず反応し、アスナから顔を離した。アスナは不満そうな顔をしてキリトを見つめるが、キリトがそれに気がつく様子はない。キリトは自分のポケットからいまだに鐘の音を慣らす携帯を見た。自分でアラームをセットしておいたのを忘れていた。

「やっべ、時間だ!アスナ、悪いけどまたな!」

キリトは慌ててアスナに別れを告げると、バタバタと走り去っていった。


「夢の終わりに鐘の音……ふふ、まるで本当のシンデレラみたい」


アスナはクスクスと笑うと、階段を下りて行った。



とぎ話のような


(魔法がとけるそのまえに、今度こそ捕まえよう。)



END!
――――――――――――――
シンデレラ。

更新日:2014/11/02
改稿日:2020/01/24

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