寒くて耳が痛い 2

シノンさんにそう問われて、
私たちは顔をみあわせた。

「俺、ちょっと欲しいものがあってさ」

「で、わたしはお兄ちゃんの買い物の付き添い(という名のボディーガード)です」

「ふーん。キリトは何が欲しいわけ?」

綺麗な水色のマフラーに口元を隠しているシノンさん。
やべぇマジかっけぇです。

「あー、っと・・・う・・・あー」

「・・・?なによ、歯切れ悪いわね。
言えない様な物なわけ?」

シノンがいぶかしむと、キリトは目をそらしつつも答えた。

「・・・耳あてが欲しいんだよ」

「耳あて?」

拍子抜けしたように言うシノンさん。
まぁ、大層なものではないですね。

「それを、なんで隠す必要があるわけ?」

じっと見られて、お兄ちゃんが困ったように
はにかんだ。
そんなお兄ちゃんもかわいいけど、ここは助け舟を出してあげようか。

「お兄ちゃん、恥ずかしいんですよ」

にやにやしながらいうと、「スグ!」と
お兄ちゃんが頬を染めながらあわてる。


「寒さで耳まで真っ赤にして、顔もちょっと染めて、
照れてると思われるのが」


と、言うと、ぷっとシノンさんは吹き出した。

「な、なに、そんな理由なの?ふく、ははっ!
かわいいなぁーキリトは」

と、シノンさんが言うと、

「そ、それだ!そう言われるのが嫌なんだ!!
俺は男であって女じゃないし!
かっこいいって言われたほうがうれしいのに!」

と、反論した。
かぁああっと頬を赤くしてまくし立てても、
逆効果なのをこの兄はわかっていない。

「あぁ、かわいいって言われるのも嫌で、
誤解されないように耳あてか。
確かに誤解はするかもね。でも、仕方ないんじゃないかな。
だってキリト、GGOのアバターには劣るとはいえ
十分・・・」

「女顔だっていうんだろ!みんなから言われてるから
わかってるよ!すごい不本意だけどな!!」

ふんっと顔を背ける姿は、
私たちが顔を見合わせて笑うのには十分だった。

「あははははっ!まったく、アンタってばほんと面白いわね・・・。
まぁいっか。じゃ、私はまだ買いたいものもあるから、
ここで行くわ。またALOでねー」

そういって、シノンは
ひらひらと手をふって去っていく。



「・・・かっこいい、ねぇ。
やっぱりキリトはかわいい女の子の方が好きなのかな・・・」

ぶつぶつとつぶやいて、足を進めるシノンだった。




「・・・それにしても、今日はいろんな人に会うねー(主にライバル女子に)」

「そうだな。もしかして、ここでアスナと会ったりして!」


「・・・私がどうかしたの?キリト君」


「ええっ!?」「うおおっ!?」

「・・・何よ、二人してそんなに驚かなくてもいいじゃない」

後ろを振り向くと、
そこには白いダッフルコートにピンクのスカートと、
黒のニーソックス姿というアスナさんが立っていた。

「アスナ!なんでここに?」

「なんでって・・・普通に買い物よ。
今度の・・・あ、いやなんでもないわ。
クリスマスとか、べ、別に関係ないから!」

「「?」」

「と、とにかく!偶然買い物に来たら
偶然君たちを見つけて、声かけただけ!
キリト君、結構目立つから」

そこまで言って、ふー、と白い息を吐いたアスナさん。
まぁ、確かに目立ちますよね。
これだけ黒くて顔が整ってると。

「俺、そんなに目立つかな?
なんにもしてないつもりなんだけど、
もしかしてなんかやっちゃってたりする?」

と、不安そうな顔を見せるキリトに、
大丈夫だというように笑顔をみせた。

「ううん、お兄ちゃんは何もしてないよ。
まぁ全身黒尽くめだし、仕方ないんじゃない?」

本当は、見とれて、ちらりとこちらを見てくる人たちの視線をたどって、
そこに黒尽くめの顔立ちが良い男の子が立っていれば、大体それはお兄ちゃんなのである。

それを本人は自覚していないので、
ナンパされても仕方ないといえば仕方ないのかもしれないが。
もちろん目を引くのは兄だけでなく、自分の存在もあることは自覚している。

「直葉ちゃんかわいいしねー。それだけで十分目立つよ」

との事である。
ぶっちゃけていうと、私たち二人でも目立つのに、
そこにアスナさんまで加わると、
美女3人、という風に見られてもおかしくはない。
お兄ちゃんは男だが、
黒い服でなければ間違われても仕方がないので、
美男ではなかろうと思う。
むしろ男の娘なんじゃないすかね!!
いいですよね『男の娘』!!おいしいですmgmg!!

「あ、そうだ二人とも。よかったら私もこの後一緒に回っていいかな?」


な  ん  だ  と。


アカンよ!?
それだけは阻止しなくてはならんよ!?
だってせっかくの二人でのデートだよそこにアスナさん加わっちゃったら
もう二人っきりじゃないじゃない
お兄ちゃんはさんで女の戦いを繰り広げるしかないじゃない阻止。
絶対阻止だよ桐ヶ谷直葉。
だってお兄ちゃんぜったいアスナさんと良い雰囲気になるもん
入り込めなくなるかもしれないじゃん阻止。
よしおk阻止の方向で行こう大丈夫だ問題ない。


「アスナさん、回りたいところがあるなら
私が付き合いますよ!」

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