おめでとう 2

「キリトさん!お誕生日おめでとうございます!」

笑顔で駆け寄ってくるシリカを見て、先ほどの恥ずかしさが多少薄れた。

「これ、受け取ってください!」

渡されたのは、大きな箱だった。

「今ここであけてもいいですよ!
っていうか、着てくださいキリトさん!」

「え?え?着る?え???」

俺は思わず何度も問い返し、

「そうです!あのですね、私はもっと短いほうがよかったんですけどアスナさんがあんまりみんなに見せすぎるのはよくないって言って」

「待て待て待て!何の話だ!?服か!?服なのか中身は!」

「そうですよ?私がいろいろ注文して作った特注品なんです!
あ、サイズはアスナさんに頼るしかなかったんですけど、
私ももっと腕を磨いてアスナさんやクラインさんみたいに服の上からでもキリトさんのスリーサイズがわかるようになりますね!」

「あっ・・・なんだろうこれデジャヴを感じざるを得ない・・・」

なんか今さらっとすごいこと言ったなシリカ。

いやいや考えたらだめだだめだ。

考えたら終わる気がする。(いろんな意味で)


ピナが同情の念を込めた目で俺を見ているのは気のせいだ。
うん、きっと気のせいだ。


「あ、ありがとう。でもさすがにここでは着替えられないから、また今度な」


「えー、残念です。
あっ、じゃあそのかわりにもう一つキリトさんにプレゼントです!」

「?」

問いかける暇もなく、背伸びをしたシリカが、俺の瞼にキスをした。

「えへへっ!これでも一時期はアイドルと呼ばれた私のキスですよ!
キリトさんにだけ特別です!」

ぱっと離れて、笑顔で言われては、

「あ、ありがとう」

としか言えないのも当然だと思う。

いや、当然であってほしい。


ふらふらと行き着いた先は、

「おっ、今日の主役様じゃないか」

エギルの元であった。

「どうだ?この料理の味は!」

「さすがエギルだよ。すげーうまい」

ここはALO内なので、あまり食べすぎるとリアルでも食欲がなくなってしまうのだが、
今日はALOに来る前に夕食をとっているので問題はない。

すでに満腹感があるが、
ごちそうを目の前にしてはせっかくエギルが作ってくれたごちそうがもったいないというものだ。

ここはありがたくいただくとしよう。

「そういやぁ、さっきから見てたが・・・」

むしゃむしゃと食べながら「んー?」と生返事をする俺。

「ずいぶんと愛されてんなぁ、キリト?」

にやにやと笑って言われた。

「誕生日だからだろ」

ウマーとごちそうを食べ続ける俺に、

「じゃあ、俺もプレゼントを」

もう料理をもらってるからプレゼントなんていいのに、とおもっていると、

「キリト、こっち向け」

と言われた。

何かと思って手をとめエギルのほうを向くと、
額にキスされた。

「Happy Birthday!」

やはり素晴らしいイントネーションでいうエギルに対し、

「・・・普通に言えばいいのに」

と漏らすと、なぜだか急に照れくさくなり、

「でもまぁ・・・ありがとな」

と言って席を立った。


「お兄ちゃん!」

声のほうを振り向くと、リーファが俺に抱き着いてきた。

「うわっと」

しっかり抱きとめると、リーファはえへへ、とわらった。

「おにいちゃん、すぐにどっか行っちゃうんだもん。
ちゃんと捕まえておかなきゃ」

「おいおい、俺はどこにも逃げないぞ」

「ほんとに?」

「ほんと」

と、笑うと、手の甲にキスを落とされた。

「おにいちゃん・・・」

急に神妙な口調になるリーファに、

「どうした?」

と問いかけると、

「おにいちゃんはやっぱり生クリーム派?
それともカスタード派?」

「へ?シュークリームの話か?」

「ううん、デコレーションの話」

「何をデコレーションするんだ?」

キリトが自ら墓穴を掘った瞬間である。

「え、決まってるでしょ?
おにいちゃんを」

「あー、そういえばまだユイと話してないなーーー!!!」

「あっ待ってよお兄ちゃん!」

ダッと駆け出した俺は悪かったのか?
否、何も悪くない。あぁ、悪くないね!



「ユイ!」

「あ、パパ!」

アスナと話していたらしいユイが、俺の頭上に降りてきた。

「今日は妖精の姿ほうがいいと思ったので、妖精の姿でいることにしました!」

とのことで、今日のユイは妖精の姿である。

「パパ、今日は大人気ですねぇ」

「誕生日だからだよ」

よしよし、と頭をなでてやると、くすぐったそうに「えへへ」と笑った。

「パパ、お誕生日おめでとうございます」

ふわっと俺の目の前に来たユイが言う。

「ありがとうな、ユイ」

「すみません、パパ。私、何もプレゼントが用意できませんでした」

とても申し訳なさそうに言うユイに、

「ユイがいてくれるだけで最高の誕生日だよ」
というと、

「パパ、かっこいいです!」

と言われた。

あぁ、ユイは本当にかわいいなぁ。

そう思っていると、ユイがひらめいたように

「あ!」と声を発した。

「ん?どうした?」

「私にもプレゼントできるものがあったんです!」

「?」

なんだろう、と思っていると、

ちゅっと頬に柔らかい感触がした。

「パパにプレゼントです!
頬にするキスの意味は、『親愛・厚意・満足感』なんですよ!」

えっへん、というユイに、俺はどうしようもなく心があったかくなった。

「そっか・・・ありがとな、ユイ」

ユイはとても幸せそうに笑った後、
リーファたちのもとへ飛んで行った。

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