チョコより甘い


あぁ、甘い。







「キリト君、もらってくれる?」
「お兄ちゃん、はい!」
「キリトさん!これどうぞ!」
「キリト、受け取らないわけないわよね?」
「・・・キリト・・・これ、あげるわ」


今日はバレンタイン。

女の子が好きな人や大切な人にチョコレートを渡し、
自分の胸のうちを明かすことが出来る
乙女にとっての一大イベントである。

そして、ここは言わずもがなエギルの店。
ちょうど店のピークが過ぎ、一息つけるという時間帯である。

そんな店のカウンターに座っているのは、
黒の剣士ことキリト・・・もとい桐ヶ谷和人である。

その周りには、5人の可愛い女の子。


「うわ、すごいな!全部手作りか?
こんなの貰っちゃっていいの?」


皆から次々と渡される、
可愛らしくラッピングされたチョコレート。
キリトは両手にそのチョコを抱えながら、
驚きと嬉しさが混じった声で言った。

「いいの!貰って欲しくて作ったんだから」

アスナがそう言うと、他の面々も頷く。

「ま、お返しは期待してるけどね」

リズベットが笑いながら言う。

「うへぇ、それが狙いかよ?」

若干引きつった笑みを浮かべるキリト。

その顔を見て、プッとリズが笑う。

「あははっ!嘘よ嘘!
アンタは素直に貰っとけばいーのよ!」

腰に手を当てて言われた。
安堵のため息をつきながら、直葉にも目を向ける。

「でも、スグはいつこんなの作ったんだ?
全然作ってる姿見なかったのに」

可愛く黄緑系でまとめられたラッピングされた袋を見て言う。
その言葉を聞いた直葉は、嬉しそうに人差し指を立てていった。

「お兄ちゃん、驚かないでよ?
なんと、このチョコは皆で集まって作ったの!」

得意げに笑う妹を見て、一瞬ぽかんとした後、

「ええええぇっ!?」

と大声を出した。

「驚きますよね、普通」

シリカがくすくす笑っていった。

「どうせキリトは女の子からチョコレートなんて貰えないんだし、
可愛そうだから作ってあげたのよ」

シノンがなんとも辛らつな言葉を発するが、
その頬はかすかに赤い。

「しののん、ツンツンしないで言っちゃえばいいのにー。
キリト君にあげたいから作ったって!」

アスナが笑うと、シノンはバッとアスナに向かい、「アスナそれは」となにやらもごもご言っていたが、キリトには聞こえていなかった。

「わざわざ作ってくれたのか・・・
ありがとうな、シノン。嬉しいよ」

シノンの作った、水色のリボンが結んであるチョコレートを見て
ふわりと笑った。

「・・・・・・・っ」

シノンが耳まで赤くなったのを、
キリトは見ていなかった。

「シリカのチョコ、動物の形してるのか?」
「そうですよー!動物の型に流し込んで作ったんです」
「へー!よく出来てるな!
特にこのパンダ型の奴、なんか和む」

きゃっきゃとシリカのチョコレートを眺めていると、
エギルが声をかけてきた。

「ほぉーこれはよく出来てるな」
「だろ?食べるのもったいないよなー」
「じゃあ俺が貰ってやろうか?」
「お前さっき貰ってただろ?」
「(ここまで凝ったのは貰ってねェよ)」

もちろんエギルのは日ごろお世話になっている、
との事で渡したギリチョコである。

「リズのは・・・カップケーキ?」
「そ!チョコだけってのも芸が無いでしょ。
っていうか作りたかっただけなんだけど」
「でもこのカップケーキ・・・なんか焦げてないか?」

じっと見つめるキリトの手からカップケーキを奪取し、

「ちょ、どこよそれ!おかしいわ、ちゃんと無事なのを選んだはず・・・!!」
「そ、そんなに怖い顔をしなくても大丈夫だぞ、冗談だから」
「なっ!バカキリト!それを早く言いなさいよね!
(・・・よ、よかった・・・)」

リズが大きな安堵のため息をつくと、
カランカランと店のベルが鳴った。

「よぉー遅くなっちまったな!」
「あ、クラインさん!」

手をひらひらと振って来るのは、
スーツ姿のクラインだった。

「クラインさんにもチョコありますよー」

シリカがはい、と小包を渡す。

「お、マジかよ!ありがとさん」

そういってチョコを受け取ったクラインは、
仕事用であろう鞄の中にチョコレートをしまった。

「に、してもキリの字おめぇ・・・」

こちらをじっと見つめてくるクライン。
そして、その顔がにぃっとゆがめられたかと思うと、

「おモテになりますなぁ」
「はぁ?お前だって皆から貰っただろ今」
「・・・・・・キリの字よぅ・・・」

なんだか複雑な顔をされたが気にしない。

「いいんですクラインさん。わかってますから」

アスナがため息とともに言った。

どういうことだ・・・。

「そういやキリトよ、なんか今日はALOにも呼ばれてんだろ?」
「あぁ。なんなんだろうな?」
「え、お兄ちゃん何その話!」

直葉が食いつく。

「いやさ、なんかサクヤやアリシャたちが、渡したいものがあるとか何とかで呼ばれたんだよなー」

渡したいものってなんだろうな?と首を傾げるキリトに、女性陣はうしろでひそひそとなにやら言っている。

「(ちょ、それってもしかして)」
「(ありえますね・・・!サクヤなら)」
「(色仕掛けなんて卑怯よ!)」
「(き、キリトさんが引っかかるわけないですよ)」
「(いいえ、キリトならありうるわ・・・)」

女性陣の心は決まった。


行かせちゃならねぇ・・・!!!!


「大丈夫だよ、キリト君。
キリト君の処女は私が守る」

「ごめんアスナ、何言ってるかわからない」

こうしちゃいられない、とアスナ率いる女性陣は立ち上がり、
「今日はここで!」と店を出た。

「・・・なんだったんだ一体」

両手いっぱいに、少女たちの思いをこめた
チョコレートを抱いて、呟いた。







チョコより甘い、君が悪い!



END!


――――――――――――――――――

バレンタインですね!

オチが安定しなくてすみません!

ちなみに私の一番好きな食べ物は
チョコレートです!(聞いてない)

このお話とは別に、もう一話バレンタイン用の小説
書きましたので、よかったらみてやってください。

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