クリスマスパーティ! 8

俺がテーブルまで行くと、
なんとも豪華で驚くべき客たちが集まっていた。

「えぇ?サクヤにアリシャ・ルー、それにユージーン!?」

俺が思わず声を出すと、
サクヤは口元を少し持ち上げ、ルーは手を振った。
ユージーンはふん、とこちらを一瞥してから、
「あの格好では勝負はできんな・・・」とぶつぶつ言っていた。

ちなみに、「僕もいるよー!」と威圧感でかき消されるようにして
言っていたのはレコンである。

「!ユイ!」

「パパと一緒にクリスマスパーティ!
うれしいです!!」

「俺も、すっごくうれしいよ」

ふふっと笑う。
とても心が温かい。

用意された席に着いた俺は、軽く息を呑んだ。

なぜなら、俺の目の前には豪華すぎる食事の数々が並んでいたのである。

「うわ、うまそう・・・」

思ったとおりのことを口にすると、
アスナとエギルが顔を見合わせてにぃっとわらった。

「ふふ、こっちでお腹を満たしちゃうとだめだとは思うけど、
キリト君に喜んでもらうためだと思ったら、
こんなにいっぱいになっちゃった」

にっこりと笑うアスナにドキッとした。
純粋に嬉しかった。

俺が感動していると、
アスナが手元にあるワイングラスを持ち上げた。
なるほど、やる事はひとつである。


「それじゃ皆!今日この日を祝おう!せーの!」



「「「「メリークリスマス!!!」」」」



一気ににぎやかになった宴の席で、
俺は『飲めや騒げや歌えや踊れ』の言葉通り、
いろんな出し物などで楽しんだ。

皆の主な話題はなぜか俺の話だった。

ムキになって反論したり、逆に諭されたり。

無茶ばかりする俺の話はなぜか皆の中で共通するものがあるのか、
盛り上がっていた。実に不本意である。

この世界では酔いというものは存在しないが、
それでも酒をあれだけ飲まされたら『変な気分』になるし
あれだけ食べればお腹もいっぱいになる。

だから、

「も、むりぃ・・・」

俺が火照った体で無理やり飲ませられようとした酒を
断っても、なにも悪くないことだとおもうのだが。

「こんな格好させといて・・・
これ以上、俺になにさせる気だよ・・・っ!!」

ちなみに今の現状を説明しよう。

俺の服は最初の服装から変わり、
今はシリカやシノン、ルーと同じケットシーの衣装(しっかりミニスカ+尻尾つき)を着ており、
笑いすぎて涙目+変な気分+もうお腹いっぱい
というような感じである。

「俺男なのに・・・お、女の格好させられるし
下はスースーするし・・・それに、お腹ちゃぷちゃぷだし・・・」

潤んだ目で酒を飲ませようとしたクラインを見れば卒倒したし、
アスナはハァハァいいながら俺をガン見している。
ていうか、この場でまともなのゲスト組とエギルだけってどういうことなの!?

「よし、キリトそのままだ。
この状態のキリトの画像をとっておけば儲かるからな」

「人をなにに使ってるんだ!?」

「ふむ、かわいいぞキリト君。
どうだ、こちらに来て酒を飲まんか」

「もう腹減ってない「こっちに来なさい」

にっこりとした笑顔で言われれば、頷くしかない。

と、いうよりサクヤの隣にユージーンいるんだけど!?

こんな格好で隣に行ったら笑われる・・・。
もういまさらだが。

「ほら、はやくおいで」

「もー、サクヤちゃんってばいつも抜け駆けするヨねー!
私にもちゃんと分けてネ!」

恥ずかしい。

こんな格好で席を立ちたくない。
でも、早く、と呼ばれてしまっているのだから
行かなくては。

「・・・う」

サクヤとルーの前まで来ると、スカートの裾を引っ張った。

「隠さなくてもいいのだぞ。
ほら・・・よく見せてごらん」

妖しい笑みで言われて、顔が熱くなる。
ドキドキする。

俯いていた顔を少しだけあげて、ちらりとサクヤを見ると、
満足そうに微笑んだ。

そして・・・

「ふあぁ!?」

逆の方向から、お尻を撫でられた。

「な、なに?」

「いやーかわいいお尻だナーと思っただけだヨ!
男のアバターなのに、こんなかわいいの、みたことないヨ!」

ほんとにもう、やめてください。

思わず心の中で悲鳴をあげる俺。

これはもう、立場とか関係なく
助けてくれそうなところに行くしかない!

ちなみに、レコンには期待していない。
ファンの方には申し訳ないが、空気キャラである。
と、なると助けてもらえるのは・・・

「ユージーン・・・っ!!」

名前を呼ぶと、はぁ、とため息がかえってきた。

やっぱり無理だったか、と内心俯く俺とは反対に、
ユージーンは声をかけてきた。

「まぁ、貴様のためというよりは、
身近に領主としてどうかと思われる行為を止めているという方が正しかろう」

とたん、ぱぁっと俺の周りに花が咲いた。

さすが、最強プレイヤーはちがう!

「おい、シルフとケットシーの領主よ。
領主としてその行いはどうかと思うぞ」

さすが!もっと言ってやって!!

俺は心の中で声をあげた。しかし、

「なにを言っている、ユージーン将軍。
今日は無礼講ではないか。
貴殿もいつまでもそのような態度をとらずに、
もっとキリト君と触れ合うといい。
ほら、貸してやる」

俺は物じゃないんですけど!?

それでも、トンッと背中を押されれば、
数センチしかない距離なので、
ユージーンの目の前まできてしまった。

「・・・・・・・」

ユージーンは俺を見たまま、何も話さない。

「・・・?ユージーン?」

「・・・こうして近くで見ると、確かに男のアバターとは思えんな」

「!!し、しかたないだろっ・・・こうなっちゃったんだから」

つい赤くなって顔を背ければ、
ユージーンははぁ、とまたため息を漏らす。

[ 18/114 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -