クリスマスパーティ! 4

さて、日付は変わり、24日。

時間は現実世界で午後3時半、ALOでは夕暮れだろうか。

ALOにログインすると、クリスマスソングをBGMに、
彩り鮮やかな町の宿の2階で目を覚ました。

雪が降ってる。

窓の外を見ると、ちらちらと雪が舞っていた。

宿屋から出て、ほっと白い息を吐く。
そのまま目的の場所、エギルの店までゆっくりと
足を進める。

時間に遅れてもいい、とは言われたが
そうもいくまい。
と思っていると、目の前で大きなクリスマスツリーが
ライトアップされた。

きらきらと輝くそのツリーは、俺をすこし見とれさせた。

運営部が気を利かせたのか、
もともとそういうプログラムだったのかは定かではないが、
夜の時間帯に入ると一気に町中が明るくライトアップされる。

まるでSAOの中に居たときのようだ、とキリトは思った。

SAOの忘れてはならない過去が、
クリスマスという単語で、ちらりと頭をよぎった。

「サチ・・・」

俺は、君のためにも、今を思い切り楽しむよ。
君も・・・天国で、歌を歌ってるかな。


『まっかなおはなのトナカイさんは・・・』


流れてきた曲で潤みそうになった目をこすり、涙を止める。
と、そこへ。

「メェエエエエリイクリィスマァアアアス!!!!」

「うおおっ!?な、なんだ!?」

前から全力で走ってきたこの時期ならよくみるものを、
俺はとっさに跳びよけた。
よく見ると、それは赤い帽子に赤い服、赤いブーツの・・・

「浮かない顔をしているそこのかわいいお兄さん!
“サンタさん”が素敵な夜をプレゼントしてあげるヨー!!」

・・・やけにハイテンションなサンタである。

そもそも、男なのか、こいつは?
背は低いし、付け髭ってことは一発でわかるし、
体はきしゃだし服は無理やり男物着たかんじだし。
それに・・・胸、膨らんでますけど!?


「って、おい!あんた女「聞こえなーい!
何にも聞こえないヨー。
そして私はサンタクロースだヨ!」

その喋り方、どこかで聞き覚えが・・・

「まさか、あんたアリ「サンタだヨ!!
異論は認めないからネ!!」

はっきりそう言い切ったアリ・・・ではなくサンタさんは、
満足げにむふーと腰に手を当てながら俺を見た。

「さぁ、サンタさんにプレゼントをお願いするといいヨ!
そうだネ、今ならサンタさんとの熱い夜とか「いらないですっ!!」

「チッ」

「舌打ち!?」

ええー・・・やだこんなサンタさん。
もっとやさしいサンタさんがいいな・・・。

「しかたないから、これをあげるヨ」

「?」

「てれれれってれーん、不思議な薬ー!(ダミ声)」

「え、それ青いタヌキじゃ「これを飲むとえっちぃ気分・・・
じゃなくて、いい気分になれるんだヨ〜」

「なに怪しいモン渡そうとしてんだ!?」

毎回毎回、この人と居るとセリフがかぶるのは何でなんだろう。

そして、またキャラ崩壊してるぞどうするんだ。

「これを君に飲ませれば、私の胸へ倒れこんで
荒い息を吐きながら「サンタさん、俺、おかしくなる・・・」となるに違いないヨ!」

「ならねぇ!!」


フフフフ・・・と笑うサンタさん。
こんなの絶対おかしいよ!


「・・・何を騒いでいるのだ」



「―――――あんた・・・サクヤ!?」



「久しいな、スプリガンのキリト君」

ふふ、と笑ってこちらに来るサクヤを、俺は
呆然と眺めていた。

なぜなら・・・サクヤさんは、いつも来ている
着物とは違う、ゆったりとした緑を強調した
ロングドレスをまとっていたのである。

「・・・どうした?私に・・・見惚れたか?」

いつの間にか眼前にまで迫っていた彼女が、
艶のある声でキリトに囁く。

「ふ、えっ!?」

びっくりして顔を真っ赤にすると、
ふふ、と扇で口を隠しながら笑う。

「可愛らしいな、やはり。
髪を下ろしている君の方が、幼く見える。
リーファから聞いたが、リアルの君はもっとかわいいとか」

ぼっと耳まで赤くなるキリト。
それを見てサクヤは目をぱちくりさせると、
フフフッ、と笑った。

「冗談だ。
さて、私はそこの自分の妄想に浸っている
危ないサンタを引き取りに来たのだが」

「あ、うん。すぐに引き取ってもらって大丈夫だ。
というか、急いで俺から遠ざけてくれ」

そう言うと、サクヤは俺を一瞥し、
「そういえば・・・」と声を漏らす。

「どうせ、後で落ち合うことになっているんだし、
このままでもいいんじゃないか?」

「???」

サクヤの言葉がわからず、首をかしげると、
俺の顔が疑問に満ちているのを見て腑に落ちたらしい。

「ああそうか、そういえばそうだったな」

・・・なんか、どこかで聞いた言葉だな。

「では、私たちは行くとしよう。“また後で”だ、キリト君」

「え?」

「おい、ルー、行くぞ!」

「えー、もうちょっとキリト君と居たいヨー」

「時間に遅れるわけにはいかんだろう」

「・・・あ、そうだったネ。忘れてたヨ」

「まったく・・・さぁ、行こう」

俺が困惑しているうちに、二人はどこかへ行ってしまった。

「・・・・・・ていうか、思いっきり「ルー」って
呼ばれてるじゃないか・・・」

俺は、シリアスだった雰囲気をぶち壊していった
ハイテンションサンタさんに向かってつぶやいた。

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