寒くて耳が痛い 6

「キリト、お前・・・」

声が、怒っている。
やはり、俺はなにか悪いことをしたのだろうか。

まさか、さっきのPoHとのやり取りを、本当は見ていたのだろうか。

だとしたら、とても俺には弁解できない。

俺、もしかして嫌われるのかな・・・


「や、だ・・・いやだ・・・!!」


クラインの顔を見ることができない。
クラインが俺のことを嫌いになったら、
俺はどうすればいいんだ?


嫌われたくない。


大切な仲間に、嫌われるのは、こわい。



「おい、キリト!?」


びっくりしたクラインの声。
その声を聞いても、俺はクラインの顔を見ることができない。

「・・・お願いだから、嫌いにならないでくれ・・・っ」

ふるふると肩を震わせる俺を、
クラインはどう思っているだろう。

ますます嫌気がさしただろうか、それとも
呆れただろうか。

すると、上から「はーっ」というため息が聞こえてきた。


「おい、キリト。
どうなったら、俺がお前を嫌いになるなんて考えになるんだよ」

驚いて、ばっと顔を上げると、
困ったように笑うクラインの顔。

「俺がお前を嫌いになるわけねーだろ。
もちろん、アスナや他の奴等もな」

にかっと笑うクラインは、いつものクラインで
安心した。

「じゃあ・・・クライン、怒ってないのか?」

おどおどして訊ねると、クラインはぎょっとした。

「俺、怒ってるように見えたか?」

そう逆に問われて、
こくりとうなづく。
だって、怒っていないなら、不機嫌そうな顔なんて
しないはずだし、歩くペースだって、
クラインならもう少し配慮してくれそうなものなのだ。

そう言うと、またクラインは苦笑した。

「あー・・・別にお前さんに怒ってたわけじゃねぇんだけどな」

困ったように頬をかくクラインを見て、

否定はしないんだな・・・

と、心の中でつぶやいた。

「なんつーか、見えない敵に怒りが沸いたってーか・・・」

「?」

見えない敵とはなんの事なのか。

「・・・キリトからよ、匂うんだよな」

こんどはこちらが驚いた。

「えぇ?俺、くさいか?」

すんすんと自分の服の腕を嗅ぐが、
特にそんなに鼻にくる異臭?はわからなかった。

「いや、そうじゃなくってよぉ・・・
香水の匂い―――
それも、女がつけるような甘いやつ」

「??アスナたちがつけてた香水じゃないのか?」

そう言うと、クラインは首を横にふった。

「たぶん、あいつらじゃねぇと思うぞ。
そんなムラッっとするよーな香水、つけねーだろ」

ムラッとって、オイ。

あれ、でも確か今日、同じような感覚になったような―――――――。

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