寒くて耳が痛い 5

それまでの出来事を感じさせない声で名前を呼ぶと、
クラインはびっくりして口をぽかんとあけた。

その顔におもわず吹きだすと、クラインが駆け寄ってきた。

「き、キリの字!?なんでお前ェがここに!?」

「・・・今日、俺その言葉すごい言ったし言われた」

そう言って微笑むと、クラインは頭にはてなを浮かべた。


かくかくしかじかと、PoHの部分だけ意図的に
言わずにここまでの事を話すと、「はぁ〜」と
間の抜けた声をだした。

「そりゃまた・・・すげぇな」

「うん、俺もそう思うよ。なんで今日に限って
こんなに知り合いばっかと会うんだろうな」

苦笑すれば、クラインは難しそうな顔をした。

「まー、アレだ。お前さんもすぐにわかるっつーか・・・」

「?」

「まぁ、その話はいいとしてよ!キリト、お前ェ何買いたいんだ?」

突然話をそっちに変更され、多少面食らったが、
話してしまってもいいものかどうか、自問自答すること30秒。

「あー・・・耳あてが欲しいんだ」

「耳あて?」

「うん。理由はきくなよ?」

一応念を押しておく。
シノンには話してしまったが、あれは不可抗力ということにする。

「おーわかった。で、まだ買ってねーんだろ?」

「あぁ、いろいろあってまだだな」

素直に頷くと、にぃっとわらったクラインの顔。

「じゃ、行くか!」

「へ?」

「だから、耳あて買いに行くんだよ」

クラインにそう言われ、目を見開くキリト。

「え、でも」

「いーから!ホレ、行くぞ!」

「うわっ」

腕を引っ張られ立たされると、
ずんずんと進んでいく。
なにせ歩幅が違うので、着いていくので精一杯なキリトだが、
少し違和感を感じていた。

―――なんか、怒ってるみたいだ。

確証は持てないが、なんとなくそう思う。
SAOでは、歩幅が違う俺にあわせてくれてたし、
それよりなにより、クラインが俺と距離をとってるみたいで、
少し寂しかった。

「・・・俺、なんか悪いことしたかなぁ」

しゅん、として小声で言うと、
クラインがたち止まってぐるんとこちらを向いた。

「おわっ、いきなり止まるなよ!」

すんでのところでぶつかりそうになる。
驚いてクラインを見上げれば、
クラインは顔をしかめていた。

「?クライン?」

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