「あー、それはそれは…」
鳴子は啜っていたシェイクをトレーに置いた。
「なかなかだね」
「でしょ」
マックのポテトをお供に、私は起きたことを全て話した。
鳴子は腕を組んでソファにもたれた。
「私、すごいショックで。津軽先輩が元カノと続いてたなんて…。腹も立っててさ」
「二股? 津軽先輩が?」
ポテトをかじりながら頷く。
「私と付き合ってからヨリ戻したのかも」
「何でそう思うの?」
「津軽先輩、全然…その、エッチとかしようってならないから、私に魅力がないから元カノに行ったのかも」
「いやいやいやいや」
「先輩は何で私と一緒にいるのかな」
言いながら、また気分が沈んでくる。
「Firstname、ストップ!」
鳴子はつまんだポテトを私に突きつけた。
「津軽先輩の話まだ何も聞いてないんでしょ」
「聞いてない」
「聞かなきゃ何もわからないよ。Firstnameの気持ちもわかるけどさ」
「………」
「先輩、悲しそうだったよ」
「………」
「話聞いてさ、それでもFirstnameが先輩のこと信じられないなら仕方ないけど…。聞いてからでもいいんじゃない? 考えるのは」
「………」
鳴子の言葉は正しい。
私は津軽先輩の口からまだ何も聞いていない。
初対面の元カノの言葉ばかりを気にして、ずっと隣にいた人と向き合うことを避けている。
「てか津軽先輩が二股なんてありえないよ。Firstnameのこと大好きじゃん」
「そ、そう?」
「うん。見てればわかる」
鳴子は真顔で言った。
「エッチを迫ってこないのもさ、Firstnameを大事にしたいとかガッついてると思われたくないとかそーゆーのかもよ」
「………」
「大丈夫だよ、Firstname! そんな変に考えなくていいって」
鳴子が朗らかに笑う。
曇りない笑顔に、私もつられて笑顔になった。
「…うん。ありがとう」
いいって、と鳴子がまた笑う。
「なんかちょっとすっきりしたよ」
「よかったよかった」
「…すっきりしたらお腹空いてきたかも」
「それでこそFirstnameだわ。って私も食べ足りないんだけどさ〜」
「ハンバーガー食べようかな?」
「いっちゃえいっちゃえ!」
気持ちが上を向いていく。
鳴子のおかげで、久しぶりに楽しい放課後を過ごした。