モモと公安課に戻ると、Firstnameは自分のデスクにいた。
「ウサちゃん、調子悪いんだって?」
声をかけるとFirstnameは顔を上げた。
「はい…。ずっと気持ち悪くて」
「大丈夫?」
確かに顔色が悪い。
「すみません。忙しい時に」
「それはいいんだけどさ」
Firstnameは申し訳無さそうに言った。
医務室じゃなくて自宅に帰りたいと言うくらいだから、よほど気分が悪いんだと思う。
我慢強いFirstnameだから心配になった。
「一人で帰れるの?」
「大丈夫です。タクシーで帰りますから」
俺の目には気丈に振る舞っているように映る。
「…ほんとに大丈夫?」
Firstnameに手を伸ばす。
でも頬に指が触れる前に顔を逸らされて、俺は動けなくなった。
手が行き場を無くす。
何かが空中分解していく。
俺はFirstnameに届かなかった手をゆっくりと下ろした。
「モモ、タクシー呼んで」
「わかりました」
「下までついてってあげて。俺は行けないから」
Firstnameの顔が見れない。
胸を抉られるような痛みを感じた。