「何で…」
何でこうもタイミングが悪いんだろう。
私はお店の前にしゃがみ込んだ。
結局ギリギリになってしまったけど、なんとかドラッグストアの営業時間に間に合うように退庁したのに。
急いで来たのに、お店は棚卸しの為にすでに閉店していた。
「あーもう!」
子供のようにおでこを膝に擦りつける。
(なんか疲れた…)
力無く目を閉じると給湯室での津軽さんの顔が瞼に浮かぶ。
あの後ももちろん接したけど、業務に関わるもの以外の会話は無かった。
(津軽さんに嫌な思いをさせた…)
謝りたい。
けど理由を説明できない以上は謝罪のしようがない。
早く、調べないと。
繁華街の量販店まで行けば今日中に買える可能性がある。
店舗を検索して、電話して今の時間でも買えるか確認して、急いで行けば───
(…なんか気持ち悪い…)
胃のあたりの不快感が思考の邪魔をする。
今日は朝から何も食べていない。
忙しくて食事を摂る暇がないことはしょっちゅうだけど、最近は食欲自体があんまり無い。
寝不足のせいもあってか、意識までもが少しずつ遠のいていくような気がした。
「あの、大丈夫ですか? ご気分でも…」
けど私は通行人の声に呼び戻された。
まずいと思った。
こんな人通りのある所でしゃがみ込んでいたら、嫌でも目立つ。
「いえ大丈夫です! すみません!」
勢いよく立ち上がる。
しかしその時、立ちくらみを起こして体が揺れた。
「大丈夫ですか!?」
咄嗟に手を出してくれた女性にもたれ掛かる。
「…すみません… 大丈夫です」
「でも顔色が」
「平気です。ありがとうございます、すみません」
心配そうに覗き込んでくれる女性から離れる。
ふらつく脚に力を入れて歩いて行く。
下半身の感覚は妙に薄いのに、上半身はひどく重い。
(今日買うのは無理だ…)
店舗を探すにもネットで買うにも、スマホをいじる気力は既に失われていた。
今夜はもう寝たい。
最近は寝つきも悪いから、眠れるかはわからないけれど───