目を開けてびっくりした。
津軽さんの顔が目の前にあったから。
しかもその寝顔は、それはそれは整っていた。
(そ、そうだ…昨日)
津軽さんに抱かれた。
恋人同士になって、初めて結ばれた。
文字通り目と鼻の先にある津軽さんの顔から、熱い息を、肌を辿った唇を、真っ直ぐに私を求めた男の人の瞳を鮮明に思い出して頬が一気に熱くなる。
(やばい、見てられない!!)
津軽さんに背中を向けようと焦る。
彼の片腕が私の体に乗っかっているから、揺らさないように寝返るのは至難の業だった。
しかもその時、無情にも枕元でスマホのアラームが鳴った。
(ああっ!!)
ワタワタしながら止める。
津軽さんが身じろぎした。
「…ん〜……」
綺麗な二重瞼が持ち上がる。
「………」
「………」
「…おはよ」
「おはようございます…」
寝起きでぼーっとした様子の津軽さん。
低くて掠れた声がすごく色っぽくてドキドキする。
「Firstnameちゃんがいる…」
「…います」
津軽さんがゆっくりと微笑む。
それがまたとんでもなく美しくて、とてもじゃないけど直視できなかった。
「…いい眺め」
津軽さんの指が私の唇から顎、首、そしてキャミソールから覗く胸元をゆっくりと辿る。
「またしたくなっちゃう」
まだ少し重そうな瞼で、甘い声で言われる。
津軽さんの色気に当てられて朝からのぼせそうだった。
「しゅ、出勤時間が…」
「わかってるよ」
津軽さんはもぞもぞと動いて私にくっついてきた。
「…もうちょっとだけ」
甘えるように、私の胸元に顔を埋める。
津軽さんの髪や息が当たってくすぐったい。
「朝ごはん食べる時間なくなっちゃいますよ…」
「いいよ。いらない」
ちゅ、と胸元にキスされる。
「Firstnameの方がいい」
もう頬が熱くて仕方ない。
恥ずかしくてたまらないけど、私は津軽さんの背中にそっと腕を回した。
この火照りが冷めるまで、もう少しだけ。
朝の静かな幸せを、噛み締めようと思った。