「やった!大吉!」
折り畳まれていたそれを開いて声を上げた。
「津軽さんは?」
隣を見ると、津軽さんは手元のおみくじを神妙な面持ちで見つめていた。
「…凶」
「え」
思いがけない結果に言葉を失う。
「待人、さわりあり。来たらず」
「願望、叶わず」
「恋愛……実らず」
読み上げて無言になる津軽さん。
「み、実ってますよ!! 大丈夫です!!」
「…うん」
「良くないやつは結んで帰らないと! 木の枝とか柵とか、細長いところに」
深刻な表情を見せる彼に少し慌て、おみくじがたくさん結ばれている場所を指差した。
ちょうど若いカップルがくくりつけているところだ。
「わかった。ウサちゃんの耳に結ぶね」
津軽さんは頷くと、私の頭におみくじを載せた。
「…ウサギの耳なんて生えてないですよ!?」
「えっ、ウサちゃんなのに?」
「ウサギじゃないですそもそも」
「早く甘酒もらおうよ〜」
凶のおみくじを私に押し付け、踵を返す。
甘酒を振る舞っているテントの方へ歩きだした。
「津軽さん、これ結ばないと!」
「いいよ別に。Firstnameちゃんが持ってて」
声を張り上げると、津軽さんはコートのポケットに両手を突っ込んだまま振り返った。
「Firstnameちゃんが持ってたら悪いもの全部跳ね返しそうじゃん」
そう言って笑顔を浮かべる。
白い息が、雲ひとつない青空に吸い込まれていった。
「私、厄除けですか?」
「うん。なんかすごい強そう」
くるりと背中を向けられる。
「ちょ、津軽さん待ってー!」
私はおみくじを握りしめて津軽さんを追いかけた。
今年もきっと、楽しい一年になると思いながら。