「なに緊張してんだよ」
昴さんが笑うと振動が伝わる。
「してません」
また笑われる。
私の体に力が入っていることなんてバレバレだ。
だって考えてみれば人生初の膝枕だったのだ。
照れくさいし、どうしていたらいいのかわからない。
「あー…落ちつく」
昴さんは明かりから守るように目元を自分の腕で覆った。
指先が私のお腹に触れる。
何だか不思議な感じだ。
触れている箇所をやけに意識してしまう。
脚は言うまでもなく、指先ですら。
今さら肌が触れたからなんて──
それ以上のコトだってたくさんしているのに。
でも、もっと。
嫌がられたらどうしようと思いつつも、私は昴さんの髪にそっと触れてみた。
彼がいつもそうしてくれるように優しく梳る。男性にしては柔らかい髪が指に心地良かった。
隠された彼の瞳が今どんな色を湛えているのかはわからない。
でも、口許がわずかに弧を描いたように見えた。
「仕事中つらかったでしょ?」
「いや、平気だった。つーか忘れてたな」
口調ははっきりしているけど、それでもどこか疲労の滲む声で話す。
「First nameの顔見たら悪化した」
「ひどっ!」
彼は静かに息を吐いた。
「…安心したのかもな」
髪を撫でる手を一瞬止めてしまった。
「え?」
昴さんは顔から腕を離すと私の頬に静かに触れた。
解放された瞳で真っ直ぐ見上げてくる。
滑らせた指で唇をなぞる。
深く綺麗な瞳に囚われた私は、騒ぎだした鼓動を鎮めるように息を呑み込んだ。
それが合図のように、彼は私の耳の後ろに手を差し込んで引き寄せる。
肘をついて体を起こすと唇を塞いだ。
「…ん」
すぐに舌が入り込んでくる。
歯列をなぞられ、吐息を奪われ、絡め取られて。
肌が粟立つ。
昴さんは口内を犯しながら体を反転させ、私の体をゆっくりと倒した。脚にも手をかけてベッドへと上げる。
完全に組み敷かれた。
そのまましばらくキスを堪能すると、おもむろに体を離して。
自分の唇をぺろりと一舐めして言った。
「…やっぱ俺は見下ろすほうがいいな」
にやりと笑う。
再び覆い被さると私の首筋に顔を埋め、ニットの中に手を入れた。
「すっ昴さん頭痛は!」
「治った」
「……えぇー!?」
そんな訳ないでしょ!と言いたかったけど、どうやら本当に回復したらしい。
すっかりあっさり復活し、更には妙に機嫌が良くなった昴さんにあちこち触られて──
疲労困憊で、横になる羽目になった私だった。
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