希望ヶ峰学園に入学した時、一番最初に仲良くなったのが狛枝凪斗だった。
 最初は普通の、常識ある人間だと思っていた――のだが、蓋を開けてみれば何とやら。幸運という才能に縛り付けられた、希望狂いの異常者であった。
 しかし――それでも俺は、狛枝のことを気に入っていたのだ。
 付かず離れずの距離を保ち、入って来て欲しくない領域には絶対に入って来ない狛枝を。
 狛枝の才能は友人にも牙を向くらしいので、それもあったのだろう。仲良くなり過ぎて、相手に迷惑を掛けないように――という気遣いが。
 希望を盲信する異常者ではあるが、優しさがない訳ではないのだ。ただ、才能のない人間に対しては手厳しいが。
 そんなちょっと変わった狛枝と、俺は当たり障りなく日々を過ごしていた。これからもずっと、この日常が続いていくのだろう――そう思いながら。
 だがその予想は、いとも容易く斬り崩されてしまった。
 他でもない、狛枝の手によって。


 ――左右田君、ごめんね。やっぱり我慢出来ないんだ。
   好きがね、止まらないんだよ。君にだけは迷惑を掛けないようにって、思ってたんだけど。
   愛してるんだ。僕如きが君を愛するなんて烏滸がましいけど、愛してるんだよ。
   ねえ、左右田君。こんな僕で良ければ、信じてよ。
   僕は絶対、死んでも裏切らないから。


 そう言って、狛枝は俺のことを寝台に押し倒した。
 其処から先のことは、あまり覚えていない。
 確か、只管に身体を撫で回されて、沢山唇を啄まれて、舌を入れられて、それから――それから、越えてはならない一線を越えてしまったような気がする。
 気が付いたら朝で、俺は全裸で寝ていた。腰やら彼処が痛くって、矢張り越えてはならない一線を越えたのだと確信した。
 隣には全裸の狛枝が居て、見惚れるくらいに優しい笑顔で「おはよう」などと言ってくるものだから、俺も普通に「おはよう」と返してしまった。
 それから俺と狛枝は風呂で身体を洗い、その日の授業を普通に受けていた。
 あの時の俺は、多分色々駄目になっていた。主に頭が。
 今も大概、駄目になっているのだが――。

「――左右田君、何考えてるの?」

 目の前には全裸の狛枝が居る。俺も全裸で、狛枝に寝台へ押し倒されている状態だ。
 あれから俺は、狛枝と度々一線を越える――いや、もう越えているから違うか。
 兎に角だ。俺はこうして狛枝と、いけないことをするようになってしまったのである。
 勿論拒絶はする。するのだが、半ば無理矢理襲ってくるので意味がないのだ。
 今だってそうだ。俺は就寝寸前だったというのに、狛枝が俺の寮部屋に突撃してきて、着ているものを無理矢理脱がしてきたのである。

「お前のことだよ」
「僕のこと? そっか、嬉しいなあ」

 狛枝は嬉しそうに笑い、俺の唇に自分の唇を押し当てた。俺の唇を食みながら、唇の隙間へ舌を入り込ませてくる。
 ぬるぬるとした狛枝の舌が、俺の口内を余すところなく撫で回してくるので、気持ち良くて変な声が出そうになった。

「声、我慢してるの? 左右田君の声、聞きたいなあ」
「う、うっせうっせ! 俺にだってプライドってものが――んうぅっ」

 人が喋っている途中だと言うのに、狛枝が噛み付くようなキスを俺に食らわせてきた。
 先程より深い口付けに、息が出来なくなる。おまけに俺の舌へ舌を絡めてくるものだから、堪らない。
 しかも此奴、俺の弱いところを知っているのか、其処ばかり舐めてくる! 舌の裏は止めろと言っているのに!

「は、んんっ――りゃめぇっ、こまえりゃ、そこはぁっ」

 抗議しながら狛枝の背中を引っ掻いてやるも、奴は全く動じない。動じないどころか、益々口内を攻め立ててくる始末。此奴は多分鬼畜だ。

「んぅっ――は、あっ――鬼畜ぅっ」
「僕は鬼畜じゃないよ」

 そう言いながら狛枝が、俺の乳首をぐりぐり弄ってくる。矢張り鬼畜じゃないか。其処は駄目だ、ぞくぞくする!

「其処は、やめろってぇっ!」
「止めろって言う割には、いつも気持ち良さそうじゃない」
「そ、そんなことは」
「あるよ」

 ぎゅっと、狛枝の馬鹿が俺の乳首を抓りやがった。痛い! 痛いけど、痛いけど――ちょっと気持ち良い。

「い、いひゃいぃっ」
「涎出てるよ」

 愉快そうに笑い、狛枝が俺の唇を指でなぞる。涙で歪んだ視界で見遣ると、狛枝の指にはべったりと俺の涎が付着していた。うわあ、恥ずかしい。

「左右田君って、本当痛いの好きだよね。可愛いよ」
「す、好きじゃねえっつうの!」
「うっそだぁっ」
「本当だっつうの!」
「ふぅん? じゃあ――」

 噛んだら痛がるよね――そう言って狛枝が、俺の乳首に噛み付きやがった。がじがじと齧り、前歯で肉を捏ねてくる。
 痛い、噛み千切る気か此奴!

「やっ、痛いって! 狛枝ぁっ、それは――ひぅっ」

 噛みながら、舌先で乳首を舐めてきやがった。
 擽るように、何度もちろちろと舐めてくる。痛いのに気持ち良い、痛いのに!

「ふぅっ――それは、反則だぁっ」
「やっぱり好きなんじゃない」
「ち、違うぅっ、好きじゃないぃっ」
「嘘吐き。此処、触ってないのにこんなになってるよ」

 そう言って狛枝が指を差したのは俺の陰部で――うわあ、勃起してる。

「感じてるから勃ってるんでしょ?」
「や、う、あぅぅっ」

 悔しいが、身体は正直というもので――言い返せない。
 悔しい。これが所謂「悔しい、でも感じちゃう! びくんびくん」というやつなのか。本当に悔しい。

「素直じゃないなあ。まあ、そんな左右田君も可愛いから好きだけど」

 むかつくくらいに爽やかな笑顔で宣ってくるものだから、罵声の一つでも浴びせてやろうかと思ったのに――言う気が失せてしまった。
 悔しい。こんな奴に見惚れてしまうだなんて!

「あれ、怒っちゃった? 顔が真っ赤だよ?」
「う――うっせうっせ! 馬鹿枝、安らかに眠れ!」
「あはっ。左右田君と一緒なら、いつでも安らかに眠れるよ」
「そ、そう言う意味じゃねえよ!」

 態とか、態となのか!
 天然のように振る舞って、俺を弄んでいるのか!
 何て厭らしい奴だ。本当にむかつく!

「くっそ、阿呆枝の毛根死に絶えろ」
「酷いなあ左右田君は。そんなことばかり言うと――意地悪しちゃうよ?」

 そう言って狛枝は、俺の陰茎をぎゅっと握り締めた。突然過ぎて、一瞬呼吸が止まった。

「――っは、ちょっ、狛枝、お前」
「痛いの、好きでしょ?」

 にこにこ笑いながら、狛枝が陰茎をぎゅうぎゅう握り締めてくる。あかん、痛いし苦しいし辛い! でも、でも――。

「ひ――あ、うぅっ、いひゃいぃっ! こまえらぁっ、やめ、それらめぇっ!」
「左右田君、涎凄いよ」

 もう涎とかどうでも良いから止めてください!

「やらぁっ、握るのやめろってばぁっ!」
「やだ? こんなに硬くなってるのに? 気持ち良いんでしょ?」

 俺の陰茎を握り締めたまま、狛枝がそれを擦り上げてきた。陰茎からは先走りが垂れ流され、ぐちぐちという音が鳴っている。
 擦られる度に腰が疼き、身体が戦慄いて変な声が出てしまう。必死に口を噤んでも、狛枝は容赦なく擦ってくるものだから、どうしても我慢出来ない。
 矢張り此奴は鬼畜だ!

「あははっ。左右田君、すっごく厭らしい顔してるよ。そんなに気持ち良い? 淫らだね」
「――っ、こ、こんな身体にしたのは――お前、だろうがっ」

 なけなしの嫌味を吐いてやると、狛枝の動きがぴたりと止まった。傷付いたのか? 様を見ろだ!
 俺が無理矢理口角を吊り上げて笑みを作ってみせると、狛枝はべろりと舌舐めずりをして――餌を目の前にした犬のような目で、俺のことを見据えた。
 あれ?

「左右田君、君は本当に淫らで可愛いよ!」

 希望を語る時のように涎を垂らした狛枝が、俺の陰茎から手を離し――無理矢理股を開かせて、先走りで濡れた数本の指を俺の恥部へ突っ込んできやがった。
 ぐちゅぐちゅと腸壁を撫で回し、中を押し開くように指で掻き混ぜてくる始末。
 しかし悲しい哉、何度もこういうことを経験している俺の身体は、その刺激で快感を覚えるようになってしまっており――気持ち良過ぎて白目を剥きそうになった。

「ひっ、ああぁぁっ! あ、うぅっ――なっ、いきなり、何を」
「ごめんね。もうちょっと弄ってあげたかったんだけど、僕の理性がやばいんだ」

 そう言う狛枝の陰茎は、完全に勃起していて――お前、人のこと言えないじゃねえか! お前もそれ、触ってねえのに勃ってんぞ――なんてこと、腸内を指で蹂躙されている俺が言える筈もなく。快楽で飛びそうになる意識を、必死で現世に繋ぎ留めておくくらいしか出来なかった。

「もう、挿れるね」

 ぐちゅりと嫌な音を立てて、指が穴から引き抜かれた。そして代わりに宛行われたのは狛枝の陰茎で――。

「――えっ、ちょっ、もうちょっと慣らしてくれよ! 切れたらどうすんだよ!」
「昨日もしたし、充分いけるよ」
「いやでも――っ、うあぁっ」

 俺の訴えは虚しく散り、狛枝の陰茎が中に押し込まれた。ごりごりと腸壁を抉るように突っ込んでくるから、圧迫感で息が詰まりそうになる。

「は、うぅっ――あぁ、あぐぅっ」
「左右田君、深呼吸深呼吸」

 判ってるわ馬鹿! 今必死に息吸ってんだろ!

「ふ、うぅぅ――はぁ、あぁぁっ」
「何回もしてるのに、未だに慣れないよね」
「お、お前なあ――本来其処は、こういうことに、使う器官じゃ、ねえんだよっ! 慣れる訳、ねえだろ馬鹿っ」
「そうかな? 最初にした時より、大分気持ち良さそうだけど」

 この馬鹿は、飄々とむかつくことを宣いやがる!
 気遣いってものがないのか。仮にも俺は男だぞ。本来ならこんな――こんなことをされる側の人間じゃないんだぞ!

「く、くっそぉっ――馬鹿枝ぁっ、俺は男だぞぉっ」
「あはっ、判ってるよ」

 へらへら笑いながら、狛枝が俺に伸し掛かる。必然的に密着する形になる所為で、狛枝の陰茎が完全に中へ入ってきやがった。
 苦しい。此奴の陰茎無駄に長いし。腸に穴が空きそう。

「あ、ぐ――苦し、いっ」
「もうちょっと我慢してね」
「おまっ、俺は注射我慢してる餓鬼じゃねえぞ!」
「あれ、結構元気そうだね。じゃあもう動いても良いか」
「あっ、あっ、ちょっと待ってください狛枝様。後生だからもうちょっと待っ――んひぁっ」

 待ったを掛けるも意味がなく、狛枝は厭らしくてむかつく笑みを浮かべながら腰を振り始めた。狛枝の陰茎がぐちゅりと中を穿ち、引き抜く時に内臓が持っていかれそうな錯覚に陥る。
 何回も経験してしまっているが、これから先もこの行為は絶対に慣れない。

「ひゃ、ぁっ――んっ、あぁっ――こまっ、えだぁっ」
「左右田君、気持ち良さそうだね」

 お前の方が気持ち良いんだろうが。涎垂らしやがって、この野郎。むかつくから中を締めてやる。

「っ――左右田君、ちょっと止めてよ。逝っちゃうじゃない」
「逝っちまえ馬鹿、そんで安らかに眠れ」
「減らず口ばかりだなあ。それならこっちにも考えがあるよ」
「は? 一体何を――」

 考えてんだよ――と言う前に、凄まじい衝撃というか、快感が全身を貫いて腰が抜けた。原因も元凶も判っている。
 狛枝が俺の前立腺を――性感帯を突きやがったのだ!

「う、あ――こまっ、狛枝っ、やめっ、其処は本当に」
「好きでしょ? 此処」

 殴りたくなるくらい楽しそうに笑い、狛枝がごりごりごりごり俺の性感帯を突き上げてくる。しつこくしつこく何度も何度も!

「あっ、あはぁっ――んやっ、やらぁっ! らめらっ、てぇっ! おかひくなりゅ、らめんなりゅぅっ!」
「あはは。呂律が回ってないよ、そんなに気持ち良いの? もっと良くしてあげる」

 もう充分だから止めてください――という俺の思いが届く訳もなく。狛枝は嬉々として俺の乳首を抓み、ぐりぐりと捏ね回し始めた。

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