おまけ

 皆の絶望病が治り、全てが今まで通りに戻る――と思っていたのだが。

「ははっ、俺みたいなスクラップ如きが――いや、違っ――ああもうっ、自虐が止まらねえ!」
「はあ、治すならちゃんと治してくださいよね。これだからブタミは――って、ふゆぅぅっ! す、すみませぇん!」

 一番長く罹っていた左右田と罪木が、未だに絶望病を引き摺っていた。
 一応「ちゃんと治しまちた」とウサミは言っていたが――どうなんだろうか。田中や狛枝、ソニアや九頭龍は完全に治っているようだが。
 しかし、絶望病だった時の記憶はしっかりあるようで――。

「左右田よ。貴様はまだ、あの忌々しき病の残り香に冒されているようだな」
「なっ――う、うっせうっせ! 何だよ、こんなどうしようもない最低辺の俺を揶揄うってのか?」
「ち、違う。俺様はその――貴様のことが、心配なだけです」
「えっ、あ――ありがとう、ございます」

 この有り様である。
 狛枝病が治った分、左右田の反応はとても芳しく、田中も花村病が治ったお蔭で、控えめな接し方をするようになり――恋人に成り立てのカップルを見ている気分になってきて、何だか居た堪れない気持ちになってくる。
 見ている此方が恥ずかしくなってくるというか、むず痒くなってくる。主に全身が。

「あはっ。あの二人、希望が満ち溢れてるよね。素晴らしいよ」

 完全復活を遂げた自虐の権化こと狛枝は、田中と左右田を生暖かい目で見ているが――俺には無理だ。直視出来ない。

「どうしたの日向君、全身掻き毟ったりして。もしかしてL5?」
「それは違うゲームだぞ! そうじゃなくてだな」
「あっ、もしかして――二人が仲良くなっちゃって寂しいの?」
「いや、違」
「じゃあ嫉妬?」

 何でそうなるんだよ。

「そっか、そうだよね。独り者の日向君にとって、二人のらぶらぶは嫉妬の対象だもんね。仕方ないよね」
「それは違」
「日向君」

 さっきから何で此奴は俺の発言を途中で切るんだ。

「何だよ」
「日向君、二人に対抗して――僕達も、らぶらぶしてみる?」

 にこにこと笑いながら宣う狛枝に、俺は溢れんばかりの慈愛を込めて微笑み――こう言った。

「お断りします」
「でっすよねぇっ!」

 若干涙目な狛枝を放置することにした俺は、もう二度と絶望病が流行らないことを祈りながら、残りの修学旅行生活は七海一択で好感度上げまくろう――と決めるのであった。

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