つけっぱなしの電気が漏れていたから、足を止めた。ガラス越しに覗き込んだ部屋の中には、閉じられたノートパソコンが鎮座するデスクが並ぶだけで、人の姿は見られない。
 明かりを消してから帰ろうかな。そう思ってドアを開けた。部屋の中に入って電気のスイッチのところへ手を伸ばした時、外からは見えない位置に人がいることに気がついた。部屋の奥の方にあるデスクに突っ伏しているその人は、知っているどころか、仕事仲間だ。姉鷺さんの部下としてボクたちの仕事を支えてくれている人。そっと近づいてみる。
 机の上にはエナジードリンクの空き缶が立てられていた。ノートパソコンのバックライトは消え、膝に掛けられていただろうブランケットは床に落ちている。
 最近仕事が多いから、疲れているんだろうな。新曲のリリースも、個人のドラマ出演も、それに伴う番宣、インタビュー、他にもたくさん、そして何よりブラホワ。多忙な日々を送っているのはボクたちだけではない。そう思うと、この人をここで起こすのは気が引けた。
 床のブランケットを拾って、そっとその肩にかける。
「……お疲れ様です。お先に失礼します」
 音を立てないように部屋を出て、ドアを閉めた。
 いい夢を見ていたのかな。ブランケットをかけた時、幸せそうに表情が綻んでいた気がした。それを見て、静かに自分の中で火がともる。──ボクらもその夢に、いや、その夢を越えたものになろう。
 冬の夜の空気さえ暑いこの感覚は、TRIGGERがうまれたあの夜に似ていた。ボクが夢を見たあの夜に。

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