ゆっくりと四つ数えて目を開ける。唇を離して、楽さんが時計を見た。
「……日付、変わったな」
確かめるように呟いた楽さんの瞳が私を射る。はい、と答えると、身体を引き寄せられて、楽さんの腕の中に収まった。
十二月四日。私と楽さんの関係に名前がついた日。世間は何でもない普通の日だけれど、私たちだけは、かけがえのない特別を共有している。他人の知らない幸せを分け合えることが、たまらなくうれしかった。
「あの、楽さん」
シルバーの瞳はいつだって私をとらえて離さない。好きです、と告げて、自分から唇を重ねる。いつもは恥ずかしくてできないけれど、今日だけは。
唇を離す。私の頭を撫でる楽さんの手のひらも、一音一音を確かめるように私を呼ぶ声の色も、愛情が塗りたくられているみたいに、甘やかで暖かい。
「記念日おめでとう」
愛してる、と楽さんが囁く。私もと答える前に唇が重ねられて、返答の代わりに首に腕を回した。
今日も、明日も、その先も。私たちが隣合う日々が続きますように。願い事は満ちた夜に溶けて、私たちを繋ぎ合わせる。その幸福を私に教えてくれて、ありがとう。伝わったかはわからないけれど、楽さんはうれしそうに笑った。