十二月。師が走ると書いて師走。仏事が増えるせいで師僧が忙しなく走り回るからそう書くのだと、小学校の頃に聞いたことがある。年の瀬というのは、世の中の動きが慌ただしい。彼なんて、特にそうだろう。
「あー。十二月かあ、去年もだけどさ、ほんと急に忙しくなんよ」
 隣の席の四葉くんが、伏せている上半身はそのままに顔だけをこちらへ向ける。気だるそうな顔はいつもと同じだけれど、授業中も寝ていたから、本当にお疲れなのだろう。
「大変だよね。IDOLiSH7もMEZZO"も、色んなのに出てるから」
「うれしーけど、ちょっと学校は来れねーかも。今年は、JIMAとかダグラスのおっさんのライブとかはないけどさ、バラエティとかCMとか、めっちゃあるし。ブラホワもあるし」
「無理して学校来ることないよ。お仕事なんだし」
「んー……」
 あー、でも。そう言って四葉くんが、瞳だけで私を見上げた。彼のぱっちりした垂れ目で見つめられると、なかなか困る。視線を外すのも躊躇われて、余計困る。
「あんたと喋んの、結構好きだからさ。朝起きれた日は、ちゃんと来んよ」
 ノート見せてくれるし。そう続けた四葉くんには、きっと他意はない。他意はないのだけど、何となく、今の発言は私だけが知っていたらいいな、とか。
 きっと四葉くんをテレビで見るたび、明日は来るかなあ、と思ってしまうようになるんだろうな。そんな、十二月のついたちの、業間のこと。

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