「あのさ、巳波くん」
「はい」
「巳波くんが探してる桜さんって、その……昔好きだった子だったりするの?付き合ってた?」
「……、ナマエさん。言っていませんでしたが」
「(ごくり)」
「桜さんは……、男性です」
「え、えっ……!!?」
「桜春樹。彼のことは好きでしたが、変な意味ではありませんよ。人間的に、ということです」
「なんだ、そうだったんだ……」
「不安にさせてしまったでしょうか。桜さんが見つかれば、私の心が傾くと」
「ちょっとね。桜、って下の名前かと思ったの。だから勘違いしちゃった。ごめんね」
「いえ。……私が下の名前で呼ぶのは、あなたのことだけ。他の方は皆同じように、苗字にさん付けです」
「わ、私だけ」
「ええ、ナマエさんのことだけ」
「なんか特別っぽいね……」
「おかしなことを言いますね。恋人なんですから、特別で当たり前ですよ」
「……、きゅんときた……」
「ふふ、そのつもりで言いました。どうぞ充分に、私にときめいてください」


「(ナマエさんだけだと言ったけれど、そう言えば了さんのことも名前にさん付けで呼んでいたんだった)」
「何? 僕のことじっと見て」
「いえ、何でもありません (まあナマエさんに限って、了さんに対して妙な勘違いはしないだろうな)」
「? ふーん」
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