「……、ん……。あれ、おはよう……巳波くん、もう起きてたんだ」
「ええ。幸せそうに眠っていたので、起こすのも気が引けて」
「えっ……、そっか、ありがとう」
「……誰の夢を、見たんです?」
「え?」
「あなたの夢に出てきたのは私ですか、それとも別の誰か?」
「えっと、本人に言うの恥ずかしいんだけど……その、巳波くんと一緒にケーキ食べてる夢、見た……」
「そうですか」
「なんでそんなこと聞いたの?」
「私を差し置いて他の男がナマエさんの夢に出てきていたらどうしようかと思いまして」
「……えと、それは、その、大丈夫だから……大丈夫ってなんだろ……」
「ええ。良かったです。夢にまで嫉妬せずに済んで。姿かたちの無いものを羨むなんて、虚しくって」
「でもほら、巳波くん。夢の中のことだし、現実で私が付き合ってるのは、その、巳波くんだし……ね?」
「ふふ、可愛らしいことを言ってくれますね。けれど、たかが夢ではなくて、されど夢、なんですよ」
「どういうこと?」
「夢に人が出てくるのは、夢見る人が願ったからではなくて、夢見られる人が『あの人に夢で出会いたい』と恋い慕っているからなんですよ。ナマエさんが私を夢で見たのも、そういうことです」
「そうなんだ、初めて知った。……ねえ、巳波くんは……」
「ふふふ、今日のところは秘密です。明日の朝、お教えしますよ」
「えっ、なんで? 今教えて?」
「だめです。秘密にしたら、ナマエさんは私の見た夢が気になって、今夜も私はナマエさんを夢見ることができるでしょうから。どうぞ、今日はたっぷり私のことを考えてくださいね」
「う……、な、なんかずるくない?」
「そうでしょうか。……ねえ、私とケーキを食べる夢を見たと言いましたよね」
「え? うん」
「今日、午後はオフなんです。正夢にしましょう。いいカフェを最近見つけたんですよ」
「ほんと? うれしいな、巳波くん大好き」
「ふふ、私も」
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