*本当は苗字呼びだけどシステム的に名前になってます



 付き合ってなどいない、と櫂は俺に言った。でも結構気に入ってるっしょ、と返す。櫂は一瞬考えるようにして、俺の視線から逃れるように瞼を下ろした。
「どうだか」
「否定しないくらいには好きなんだな」
「す……、……」
 ああ、目見開いちゃって。照れてる照れてる。櫂は肌が白いほうだが、今はその頬がすこし鮮やかに色づいている。こんなことは滅多にない。それだけで、櫂にとってナマエが特別な人間だという証拠だろう。思わずにやついた俺を咎める翡翠の瞳が、心なしか動揺に揺れているように思う。
「いきなり何だ。俺があいつをどう思っていようと、おまえには関係のない話だろう」
「まー、そりゃそうなんだけどさ。ただ……」
 ちらりと廊下を窺う。先生に呼ばれていると言っていたナマエはまだ戻らない。こうして放課後の時間を割いてまであいつを待つのだって、気持ちの表れだろうに。そこまで好きでもない相手のことなら待たずに、ファイトをしに行くのが櫂だ。
「大事にしろよ、そういうの」
「……、フン……」
 下らん、と言った櫂が立ち上がるのと、ナマエが教室に駆け込んで来るのが同時だった。
 ナマエの隣に当然のように立つ櫂に対して思う。それは決して、当たり前じゃないんだぞ。俺たちは、あと二年したら同級生をやめるのだから。もしかしたら、進路はバラバラになるかもしれない。だからちゃんと、言葉とか態度で表さねえと。──要するに、手とか繋げよってこと!
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