倉庫 | ナノ




「落ち着いたか」
「はい」

結局あの後ジャシン様に対する詫びを延々述べたがジャシン様からの返事は無かった。
周りのみなさんは突然叫びだしたわたしに大分引いていたようだ。
あれから数時間たちやっと落ち着いたわたしはソファに座らされていた。
結局入金は出来そうにない上鬼鮫とのクッキー作りの時間などとうにすぎている。わたしがジャシン様と喧嘩したばっかりにこんなことに……!

「でさ、結局ジャシン教ってなんなわけ?」

金髪美少年はジャシン教がなんなのかがすごく気になっているようだった。イケメンに弱いわたしはサソリさんに散々罵られた拙い頭で飛段の説明を思い出しながら説明することにした。

「えーっと‥‥同僚が入ってる新興宗教で、確か”汝、隣人を殺戮せよ”が教義だったかな?とりあえず殺戮がモットーの頭がおかしい宗教」

これ以上ないってくらい簡単に説明すると「ほう、興味深いね」とわたしにナイフを投げつけてきた人が少し口元を釣り上げたがそれは儀式のめんどくさ知らないから言えるんだよ。飛段の儀式の片付けとか手伝わされてみろよ、めんどくさいったらないからな!
いつか角都が株に忙しいときに飛段と組まされた訳だが飛段とは二度と組むものかと思った。主に儀式のめんどくささで。
その点サソリさんと組んだときの楽しさったらない。目の保養的な意味で。
はあ、と溜息を吐くわたし。相変わらずわたし蚊帳の外で「で、どうするの、殺すの?」なんて物騒な会話が繰り広げられているが相変わらずわたしの頭は入金が遅れたことによる恐怖で支配されているので右の耳から左の耳に通り抜けて行く。つーか大体、なんでリーダーはわたしに指輪くれないんだろうね。小南ちゃんに次いで長い付き合いなのになんで雑用とかにされてるんだろうね、解せない。実力が劣っているつもりはないんだけどなあ、精神的には負けてるけど。少なくてもデイダラのアホには勝ってるよ、うん。うんとかちょっとデイダラの口癖移ってるわ。いやそんなことよりも問題は入金だよ。ジャシン様わたしの代わりに入金しといてくれないかな、というかわたしいつになったら帰れるのかな。そもそもここはどこなのかな。ジャシン様どこにわたしのことポイしたの。うんうん唸るわたし。
必死に考えすぎて「おい」という似非飛段の声に気付かなかった。
3回目らしい呼びかけにやっと気付いたときには全員が呆れたような目でこちらを見ていた。

「すいません、何でした?」
「そんなに真剣に何考えてたんだ」

特に呆れた様子なのはピンクの髪をアップにしたかわいらしい女の子だった。

「いや、あの……お給料の入金のことを少々。遅れるとすごい怒られるんです」
「お前今の状況分かてるか?」
「分かってますよ、わたしを殺すか殺さないかでしょ?でもわたしにとって殺す殺される以前に入金のことの方が重要なんです」
「殺されたら入金も何もないだろ」
「いや殺されないですし」

多分だけど、一応付け加えると全員から殺気的な物を向けられた。もしかしなくても怒らせてしまったのか。

「怒ってます?」
「これだけの殺気を向けられてその態度か」

似非飛段さんがクツクツ笑った。髪型が似てるだけでゲハハハとは笑ってくれないらしい。ちょっと寂しい。
思わずがっかりした顔をしてしまうわたしに「どうした?」と尋ねる似非飛段さん。やっぱり優しい。
そうだよね、髪型が似てるってだけで一緒にしたら駄目だよねと納得。

「何でもないです。そういえばみなさんは何の会の人ですか?」
「盗賊だ」
「へえ、盗賊の会」
「こいつふざけてるか」
「まあ待てフェイタン。俺たちは幻影旅団だ」
「へえ」

組織名が幻影旅団ってことでいいのだろうか。盗賊の会の方がかっこいい気がするけど、暁という組織名を付けるときに世界平和の会にしようよと言って長門と小南に散々センスの無さについて語られたわたしなので黙っておく。だって世界平和の会の方が目的が分かりやすいじゃん。幻影旅団もさ、わたしみたいにそれが何か分からない人が出会って幻影旅団だって言われても誰?何する人?ってなるから盗賊の会にした方がいいと思うんだよね。そんなことを考えていたら「幻影旅団を知らない?」と似非飛段さんが驚いたような顔をした。えっ嘘そんなに有名なの?っていう以前にわたしもしかしなくても声に出してたんだろうか。

「安心して、ばっちり出てた」

金髪美少年がイイ笑顔でそう言った。マジか。
120115


×