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※長門と小南に拾われて暁に入るけど、暁でも旅団でもしたっぱなはなし



昨日のことを思い出してみよう。
まずはじめに、朝からサソリさんの機嫌がすこぶる悪かった。そういう時は決まってデイダラとわたしに矛先が向くのだが、昨日も例外なく理不尽に怒られコップを投げられ足をつかずにタップダンスしてみろという無茶振りまで頂いた。
そのせいでだんだんデイダラもいらいらしてきてわたしに当たるようになる。
サソリさんは(顔がいいから)いいけどデイダラに当たられるとわたしもいらつくわけで、デイダラとわたしの喧嘩が始まる。それを止めようとして巻き込まれる鬼鮫。傍観しながら団子を食べるイタチ。イタチ団子食べ過ぎだと誰が買いに行くと思ってんだと思いながらデイダラに投げた筈のお茶碗がサソリさんの方に向かって行き、機嫌の悪さも手伝ってブチ切れたサソリさんが参戦決定。毒をまき散らし始める。
換気!とわたしが叫んで息を止めたまま全員で窓を開けるがわたしは勢いあまりすぎて窓から落ちた。これぞ負の連鎖。デフレスパイラル。違う。どうでもいいけど角都の前でデフレスパイラルとか言うと「不景気だからな、小遣いカットだ」とかすぐわたしのお小遣いをカットしにかかるのでこのセリフは角都の前では言ってはいけないセリフ堂々の第3位だ。ほんとどうでもいい。
サソリさん参戦とか勝ち目ねーよと窓から落ちた拍子に逃げ出そうとするもサソリさんのチャクラ糸で引っ張り上げられ、デイダラにそうは行くかとバックドロップをかけられたため仕返しでマゲをひっつかんでブン投げてやろうと思ってたらサソリさんがチャクラ糸で防御用に動かしていた机が思いっきり顔にぶち当たって鼻血が出たから一旦戦線離脱。鼻血が止まって戻ってきたら喧嘩は収まっていて、サソリさんに「ここ片付けとけ」と命令されて二つ返事で頷く。
男は顔がモットーのわたしはサソリさんにすこぶる弱いのである。
とまあそんなことは置いといてそういえば昨日は飛段のジャシン教への勧誘が特にしつこかったように思う。わたしもサソリさんの命令により喧嘩の後片付けしたりそろそろ無くなりそうなイタチさんの団子を買いに行かなければならなかったりで忙しかったため話半分に聞いて途中から返事もしなくなっていたのに飛段は勧誘を諦めようとせず「入らなきゃジャシン様にお前を呪い殺してもらうからな!」と言う物騒な一言を残し本日の儀式をするために部屋に籠り始めた。
そのおかげか今日の夢見は最悪で、飛段から夢の中でまで勧誘を受ける羽目になった挙句、飛弾のゲハハハハハ!という笑い声が遠のいていってやっと解放されると思った瞬間『我が名はジャシン』とか言い始める物体が現れてなんかもう死んでしまえと叫んでいた。そしたらジャシン様が怒って延々呪詛を吐きまくるので寝たのに全然寝た気がしない。ああもう今何時だろう、あんまり起きるの遅すぎると角都さんに時は金なり的な説教されるから嫌なんだよな。そろそろ起きようと目を開いた。知らない人達がいた。え、誰?びっくりして飛び起きると知らない人たちはびっくりしたような目をしてこっちを見る。ほんと誰なの君ら。というかここどこ?わたし今日は鬼鮫とクッキー作って角都さんの口座にお金入金しに行かなきゃいかけないんだけど。ちょっとでも入金遅れると角都さんからすごい勢いで怒られるんだけど。凝視され始めたわたしが立ち上がると何故かナイフが飛んできた。慌てて避ける。暁の家庭内戦争で培われたわたしの回避能力をなめてもらっては困る。ほんとぼーっと突っ立ってると毒針やら起爆粘土やらが飛んできて数秒後には毒で倒れたり頭が吹っ飛んでたりということになりかねないため暁のメンバーが増え始めた頃まず身に付けたのはこの回避能力だ。目瞑ってても避けられるぜ、と得意げに笑って見せたらナイフが数十本になってやってきたので反射的に調子乗ってすいませんと謝りそうになったがなんで見知らぬ人に突然ナイフ投げられた側のわたしが謝らなきゃいけないのか理解できなかったためひょいひょいと避けるだけで口は開かなかった。
すると「やめろ、フェイ」となんか黒い髪を飛段みたいにオールバックにした人がナイフの人を止めてくれた。助かった、とほっとしていると「驚いたな」と似非飛段が興味深そうにわたしを見る。別に驚くのは勝手に驚いてくれてればいいんですけどわたしは早く入金しに行きたいんですよね。なんとなく正座したまま今は居ない角都さんに怯えそわそわして見たけど入金しに行きたいですなんて言える雰囲気じゃないので黙っておく。
暁という集団組織で培われた能力その2、空気を読むを発動し黙秘し続けるわたしを置いて似非飛段さんは「ミイラ」だとか「ジャシン教」だとかぶつぶつ言っている。ん?

「ジャシン教?」

思わずわたしが聞き返すと全員が一斉にこちらを見るという尾獣に関する暁会議でわたしが「お茶淹れますけど緑茶がいいですか、それとも夏なので麦茶がいいですか」と発言したときの状況と同じ状況になってちょっと泣きたい。
視線が怖いよ、わたしいつになったら入金しに行けるんだよ、と思っていると「お前はジャシンの使いか」と聞かれたため思わず「は?」と返してしまう。誰がジャシンの使いだって。

「違いますけど、知り合いにジャシン様を崇拝してやまない馬鹿がいるので良かったら紹介しましょうか」

わたしがそう言った瞬間訪れる沈黙。なにこれ超気まずい。

「お前はミイラじゃないのか?」
「ミイラ?なんで?」

どうしてこの人わたしがミイラだと思ったんだろうと全然話がつかめずに首を傾げたら「君このミイラから脱皮したんだよ」と金髪美少年がわたしの周りにある抜け殻を指さしてそう言った。実に不可解である。

「……なんでわたしミイラから脱皮してるんですか?」
「さあ、我々はこのジャシン教祖のミイラに強い念が宿っていると聞いて盗んだだけだからな」

似非飛段さんの説明によるとわたしが入っていたのはジャシン教祖のミイラで、この人達はこのジャシン教祖のミイラを盗んできて、さあ祝杯だってなったタイミングでわたしが脱皮したらしい。なんだそれ。

「そもそもジャシン教っていうのが胡散臭いんだよね、どれだけ調べても詳細は一切出てこないし、団長が気になるっていうから盗んだけど……」
「強い念の正体はこいつだったってわけだ」
「というかなんでミイラの中に入ってたの?」
「そういう念能力を受けたんじゃない?」

状況を理解出来ないわたしを置いてきぼりにして好き勝手に喋る人達。こういう勝手さ具合は暁と全然変わらないなあと思っていたが話を聞いていくうちにはっと思い出した。なんか夢に出てきたジャシン様が『お前みたいなやつはミイラにしてポイだ』みたいなこと言っていた……ような……?

「マジかよ……」

わたしそれに出来るもんならやってみろみたいな返しした気がする……。
顔を青くして頭を抱えたわたしは何だ何だとわたしを見る人達など忘れ「お許しくださいジャシン様!!!!!!!」とその場で土下座するのだった。


120115

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