「あ、死んだ」 操作が出来なくなったため携帯片手にそう呟くと「名前が殺したってことか?」と団長が口を挟む。 「危機的状況に陥れば開くかなと思ったんだけど、どうやら別の攻撃手段持ってたみたい」 侮れないね、電子革命。 「名前の回収は?」 「パクに任せてる。多分そのうち連れてくると思うけど」 「それにしてもお前は相変わらず性格悪いな」 「なんで?名前の念能力開花に協力してあげてるってのに」 「やり方がだ」 関係ない人間まで巻き込んで、と言われたのであの男は最近俺の周辺嗅ぎまわってて鬱陶しかったから利用したまでだよと説明する。アンテナ刺して操って、適当なところで自殺させる気だったんだけど予想外に名前がやるみたいだから放置しといたら勝手に死んだ。帰ってきたらその攻撃手段の原理も聞かなきゃな。収穫といえば収穫はあったかも、と笑みを浮かべていたらガチャリと音がして戸が開く。 「名前回収してきたわよ」 「おかえり、パク」 「逃げる途中で力尽きたようね。気絶してるわ」 はい、と名前を俺に差し出したパク。なんで俺?br>「あなたのしょうもない策略のせいでこんなことになっちゃったんでしょう。介抱してあげなさい」 「しょうもないって失礼だなあ」 これも名前を思ってのことなんだけど!と仕方なく膝枕してあげると「で、次の策は何かあるのか?」と団長。なんだかんだ名前のことを気に入ってるらしい団長は早く名前に念を覚えさせて安心したいらしかった。 「んー、もうめんどくさいし最終手段で念を流し込んで無理やり開かせたいんだけど拒絶反応起こされても困るからなあ」 「かと言ってこのまま待つ気もないんでしょう?」 「あんな雑魚に任せるんじゃなくて、フェイタンとかに本気で殺そうとさせればどうにかなるかなあ」 「フェイタンに任せたらほんとに殺すぞ」 「それくらいじゃなきゃどうしようもないでしょ」 なかなか上手くいかないもんだよねえ、俺らどうやって覚えたんだっけ、と話し合っていたら膝の塊が少し動いた。視線を膝に向けると、ばっちりと目が合う。俺を見た瞬間泣きそうな顔をする名前に、ああちょっと悪いことしたかなって気になったけどでも名前のためでもあるんだよと言い訳めいたことを考えていたらついに泣き出してしまった。団長とパクの視線が痛い。中身が16歳と分かっていてもこの姿で泣かれるとさすがに心が痛む。 「大丈夫?怖かったね」 よしよしと名前を抱きかかえて頭を撫でていたら二人から原因作った癖に何をいけしゃあしゃあとみたいな目で見られた。いやだから名前の能力開花のためだったんだって。結局精孔開かなかったけど。 「……怖かった、けど、今思うとあっけなかった」 「え?」 「ちょっと前に直接的間接的って話したでしょ」 「ああ、殺すはなし?」 「そう。今日初めて、多分だけど殺した。怖かったけど、ああこんなもんなのかって今思った」 顔を上げた名前は少しだけど笑っていて、ああ彼女はこっち側の人間なのかと漠然と感じた。会って少しした頃にあんなに直接手を下すことを恐れていた彼女はもういない。震えながらも、「何も感じなった、わたしが生きるためだから仕方ないって思った」と言った名前を抱きしめる。なんだか少し寂しく感じるのは何故だろう。自分が仕掛けたことによってこんなことになるとは。本来の目的とは違ったけど収穫はあった、なんて思ってる場合ではなかったのかもしれない。名前を変えてしまったことが少し怖くなったけれど、いずれは通る道だったのだと自分を納得させた。念を覚えたら嫌でも殺し合いをすることがあるだろうし、俺らと行動を共にするなら猶更だ。時期が少し早まっただけなのだ。 「……途中から、見てたけど名前攻撃手段持ってたんだね」 「……もともとはわたしの物じゃないの。『原子崩し』っていう第4位の能力根源が電子だって分かって、演算のコツを教えてもらってできるようになった」 「どういう原理?」 「電子を波と粒子のどっちでもない状態にして、それを高速で叩きつける」 「そんなこともできるの」 「威力は象と蟻ぐらい違うけどね」 でも念能力者相手でも何とかなったから良かった、と笑った名前はいつもの名前だった。 120101 ×
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