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私はこれでも一応忍である。
忍の里出身で生まれたときから忍の英才教育をされてきたような人間なのである。ただちょっと詰めが甘かったり変なミスを頻発したりするだけで、本気になったらすごいのだ。現に今も高杉さんの寝室の屋根裏から彼をじっと見ているが私に気付いたという素振りは見えない。
なぜ高杉さんを見ているかって?それは忍務でもなんでもなくただの私の最近の趣味だ。
この間たまたま昼寝をしている高杉さんを見てその寝顔にうっかりときめいたのがことの始まりで、それ以来こうして夜忍び込んでこっそり視か…眺めているのだった。高杉さんってなんだか美人さんだから、こう、襲いたくなるよね。性的な意味で。だから自分の睡眠時間を削ってまでも視姦…じゃねーや眺めてるのだけどそんなことばっかやってるせいで最近寝不足といいますか、常に眠くて困ってるんですよね。でも止めない。
この行為によって私の心にどれだけ癒されていることか。あ、でも流石にちょっと、いや大分眠い……10分仮眠取ろう


起きたら目の前に高杉さんがいた。私の体は縄で完全ホールドされていた。高杉さんって緊縛プレイとか好きでしたっけと口に出したら斬られそうな雰囲気なので黙っておく。

「……誰に言われて俺を監視してた」
「……はい?」
「ここ数日、俺が寝入る頃を狙って天井裏に潜入してただろ」
「えっ、知ってたんですか?」

やだ、恥ずかしいと言ったら高杉さんが怪訝な顔をした。

「あの、言っときますけど別に高杉さんの命を狙っての行動とかじゃないですからね」
「あァ?だったらなんであんなとこにいたんだよ」
「え…………しゅ、趣味です」
「……趣味?」
「高杉さんの寝顔を視姦、じゃなかった拝見しながらときめくっていうただの趣味です」

そう言った瞬間の高杉さんの虫けらを見るような目と言ったら。言っとくけどまた子なんて高杉さんが入室中の厠の中覗こうとしてたんだからな!それに比べたら寝顔なんて全然かわいいもんなんだからな!そう声を大にして叫びたいけどそれしたら今まで積み上げてきたまた子との友情がスパーキングすると思うので流石に自重。同じ高杉さんストーキング仲間を失うのはとても手痛い。盗撮した写真とか交換出来ないのは非常にまずい。

そんなわけで私には高杉さんを暗殺的な意味で襲う気持ちなんてこれっぽっちもないので縄をほどいてくださいとお願いしたら「暗殺的な意味じゃねえなら襲うってことだろ?」と妙に勘のいい高杉さんはそのまま布団に入ってしまった。
「緊縛プレイだけじゃなくて放置プレイもお好きとはドSなんですね!そんな高杉さんが好きです!!」

ちょっと興奮しながら叫んだけど無視された。これは本格的に放置プレイの構えである。また子とかなら喜んで、というか高杉さんの部屋で一夜過ごせることに大歓喜で放置されるんだろうけど私は違う。そんなことじゃ満足しない。忍をなめきっている高杉さんにお教えしましょう、忍相手に縄で縛るってあんまり意味ないよと!ジャキンと音がして縄が切れた。こういうときのために常に暗器を忍ばせているのだ。というか私は暗器使いであるため、私の服の中はちょっとした武器庫みたいになっている。まあそんなことは置いといて。

「たっかすっぎさああーん!」

某ルパンのように高杉さんが寝ている布団に飛びついたら、くるりと布団を巻き込みながら横 にずれた高杉さん。おかげで私顎強打。「なんで避けるんですか!」と抗議したら「うるせェ黙って寝ろ」と睨まれた。これはもしかして一緒に寝ようぜっていうお誘い?じゃあ失礼しますと高杉さんの布団に入ろうとしたら、「いや自分の部屋帰れよ」あれ?

「私的に一緒に寝ていいよってことだと思ったんですけど」
「一言も言ってねェだろ」

拡大解釈しすぎだろと私を追い出そうとする高杉さんに意地になる私。挙げ句の果てに高杉さんに抱きつき「いいです、高杉さんを性的に襲うのは諦めますけど高杉さんを抱き枕にする夢は果たします」。そう宣言して寝ようとしたら「……普通逆じゃねえのか」みたいなこと言われたけど多分高杉さんは私に性的魅力とかは感じていないと思うので逆はありえないですね。あと私襲われるより襲いたい派の肉食系女子ってやつなんで!
自信満々に言ったら「……もういい黙って寝ろ」と布団に迎え入れてくれたので、目を閉じて寝ようとしたけどあれだけ寝不足寝不足言ってたのに肝心なときに眠れない罠。多分隣に高杉さんっていう性的魅力が高い人が 寝てるからじゃないかな。高杉さんいつもあんなにいかがわしそうな顔してる癖に私に手出したりしないし(多分私に興味ないんだろうけど)、なんだかんだ暇してると私に限らず構ってくれるしすごいいい人なんだよな。今だって高杉さん眠れませんって言えば無視しないで「羊でも数えてろ」とかアドバイスくれるし「高杉さん抱きついていいですか」って言えば拒否しつつも抱きつけば数分の攻防後に無言で許容してくれるし。まあさすがに着物脱がそうとしたら脚を思いっきり蹴られたけど。仕方ないから着物の中に手を入れてすべすべ肌を堪能することにする。高杉さんの鎖骨はいい形だなとか腰骨が好きだなと思っていたら急に手を掴まれた。

「お前、いちいち手つきがやらしくてキモい」
「そんな心底嫌そうな顔しなくたって…!」

ちょっとぐらい感じてくれたっていいじゃないですかと言ったら殴られた。全力。痛がってのたうち回ってると「動くな寒いだろうが」と私の動きと共に動く掛け布団を引っ張られた。寒いんならもっと厚着すればいいのに……。また何かしないようにきっちり私の 両手を握って目を瞑った高杉さんに私の萌えゲージはマックスまで達す。悶え死にそう。この至近距離で寝顔とか…!!瞼とか舐めたいと思ったのだが流石に引かれそうなので鼻の頭にキスをするだけにした。近くで見ても美しいなこの人。


結局、次の日も私は寝不足だった。高杉さんの寝顔を間近で見る機会なんてそうそうないと思い寝顔他呼吸の仕方だとかを全身に焼き付けた結果である。朝日も昇る頃には繋がれていた手も緩んだため、懐から携帯を取り出して一枚だけ写真を撮った。また子に送信して自分も待ち受けにすると、送信して1分もしないうちから「なまえ!なまえはどこっスかああああああ!」という叫び声が聞こえてきた。あいつ早起きだな。その声に高杉さんが目を覚ました。おはようございますと笑顔で言ったらいつものにやにやした顔ではなくものすごい機嫌の悪そうな顔で舌打ちされたけど、私とまた子の間ではそれすらもご褒美なので朝からご馳走さまです!
111126

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