無事雑貨屋で合鍵に付けるかわいいストラップも見つけて、アルバイト先のコンビニから東堂家に帰る途中、ふと気付く。 東堂さん、あれだけ見た目が良いのならばきっと彼女もいるのだろう。それなのにわたしなんかとルームシェアしてていいのだろうか。 いや、普通に考えて良くない。自分が東堂さんの彼女だったならばいくら家が火事で焼けて無くなった可哀想な少女とは言え彼氏の家に置いておくのは嫌だ。 一度考え始めてしまうとそればかりが頭を占め、駅から帰宅する足も自然と速くなる。 帰ったら一番に確認しなくては、と更に足を速めようとしたところでポンと肩に手を置かれる。 「うわっ!?」 考え事をしていたので急なことにびっくりして、女らしさのかけらも無い悲鳴を出してしまった。 おそるおそる振り返ると、そこに居たのはわたしが今の今まで考えていた東堂さんであった。 今帰りか、と問われたので頷いて、同じことを聞き返すと東堂さんも首を縦に振る。 「そんなに急いで歩くと転ぶぞ」 「やだ、そんなに鈍くさくないってば」 「そうか?」 ショッピングモールの行き帰りの道でよく段差に躓いていたからな、と言った東堂さんに反論しようとしたが、昔っから転ぶまでいくことは少ないにしても道路のちょっとした段差や溝でよく蹴躓いていたので何も言い返せなかった。実は今日の帰り道も一回蹴躓いてるので尚更だ。 「そういえばなんだけど東堂さん彼女とか居るの?」 「ん?」 「いや、もし居るのならばわたしとルームシェアなんかしてちゃマズいんじゃないかって」 そしてここで会ったならもう聞いてしまおうと我慢の出来ないわたしは先程ずっと考えていたことを口にする。二日も経ってから聞くことじゃないんだけどさ、と付け加えると本当になと笑われた。 「心配しなくても、彼女が居たら最初から家に招いていない」 「えっ、居ないの?東堂さん美形だから絶対彼女居ると思ったのに」 「まあ美形でも彼女が居ない時期ぐらいあるさ」 「ちなみにどのくらい居ないの?」 「…………3年」 「結構長くない!?」 もっと一ヶ月とかそのくらいかと思ってたよ!と思ったことをそのまま口に出してしまうとうるさいなと睨まれる。 「仕事し始めてからそんなこと考える暇が無かったんだよ」 「えー、でも絶対告白とかされてそうじゃん」 「まあ否定はしないが」 「自称美形だしね」 「自称じゃない、自他共に認める美形だ」 「ふーん、まあ何にせよまだルームシェアしてて良いってことは分かった」 「そう言うってことは春瀬さんにも彼氏は居ないと取っていいんだな?」 「それこそ居たら最初っから彼氏に頼ってるよね」 残念ながら頼れる彼氏が居なかった為に東堂さんちにご厄介になることになったのである。良かったのか悪かったのかは分からないが、二日経った今楽しく生活出来ているので良かったことにする。ポジティブシンキング! 「心配しなくても東堂さんに彼女が出来たら出て行くから安心していいよ」 「まあしばらくそんな予定は無いがな」 「そうなの?」 「今は仕事が一番楽しいし、手の掛かる同居人が居るから彼女を作る暇が無い」 「手の掛かるとか言うし!あいたっ!」 東堂さんに向かって文句を言おうとしたらまた蹴躓いた。転ばないように咄嗟にわたしの首根っこを掴んだ東堂さんは、やっぱり手が掛かるじゃないかと言って笑っている。首根っこを掴んだままなのでぐえっとなったわたしが東堂さんを睨むとようやく気付いて離してくれた。 「手の掛かる子ほどかわいいって受け取っておくことにするよ」 「ポジティブすぎるだろう」 140714 ×
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