東堂さんが好きかもしれないと自覚して真っ先に相談したのはリカだった。 ねえちょっと話があるんだけどとリカを最近出来たパスタ屋さんに呼び出して話を切り出す。 「わたし、東堂さんのこと好きなのかもしれない」 「何今更なこと言ってんの?」 結構勇気を出して言ったのだが、返って来たのはリカの呆れ顔だった。 東堂さんとわたしをくっつけたがっていたリカだから、てっきりもっと喜んでくれると思っていたのに。そんなもんとっくに知ってたっつーのと頬杖をついて言われるのは完全に予想外だ。 「だって最近のアンタの話、東堂さんばっかりだし」 「そんなに話してた?」 「むしろ東堂さん以外の話が珍しいくらいにはね」 てっきり自分でも自覚済みかと思ってたら今かよと溜息までつかれる始末だ。 「で、好きだって気付いたからには何かアプローチしてる訳?」 「いや、まだ好きかもしれないって段階だから」 「……そんなこと言ってる内に東堂さんに彼女が出来たらどうするのよ」 「それはやだけど、わたしが要る限り彼女は作らないって言ってたもん」 「分からないわよ。めちゃくちゃ肉食系の女子とワンナイトラブ的なのが起きるかもしれないし」 確かに、いくら東堂さんと言えど迫られればそういうことになってしまうかもしれない。 東堂さんに限ってそれは無いと信じたいけど。眉をひそめるわたしを見て、だからいい加減認めなっての、とリカが追いつめてくる。 今までの東堂さんを思い出して、きゅんと胸が高鳴り、これから東堂さんに彼女が出来るかもしれないと思うとズキリと痛む。 ……これは完全に恋しちゃってるやつじゃないか。 結局あの場で東堂さんが好きだということを認め、今後どうアプローチをかけていくか話し合った訳だが、そもそもアプローチをかけていっていいのか。一緒に暮らしているのに男女の仲を意識させたら気まずくなるんじゃないだろうか。 前に東堂さんとそういう関係になるとか気まずいよねアッハッハみたいに言っていた手前、告白するにしても今更言い出しにくすぎる。 いや、居辛くなるのは嫌なので告白する気は今のところ一切無いのだが。 「おかえり」 そんなことを考えていたらわたしの帰宅に気付いた東堂さんがわざわざ玄関まで出て出迎えてくれた。 「今日はリカちゃんとランチだったんだろう。楽しかったか?」 「うん。女の語り合いをしてきた」 「恋バナとかか?」 「そんな感じ」 「俺としてくれてもいいぞ」 「何を?恋バナを?」 思わず東堂さんを見ると大真面目な顔で頷いていた。何で好きな人と恋バナをしなきゃならないんだ。 俺だって女子大生と恋バナしたいと駄々をこね始めた東堂さんの話をよくよく聞いてみると。本当に恋バナがしたい訳じゃなくて、今日一日わたしが居なくてちょっと寂しかったから構って欲しいだけらしい。 なんだよそれ、かわいすぎる。 「ここ最近の休みは大体春瀬さんと過ごしていたからか、一人だと何だか物足りなくてな」 「なんかそういうこと言われると照れるね」 「言ってから俺も結構恥ずかしいなと思った」 「東堂さん寂しがりやみたいだからわたしが抱きしめてあげてもいいよ」 「遠慮しておく」 「何でよー!」 今ならタダでやってあげるのにと口を尖らせて拗ねたフリをすると、いつもは有料なのかよという東堂さんの笑い声が聞こえる。 ほら、今日は一緒に夕ご飯作るかと提案されると頷くしか無く、わたしが頷くのを見て東堂さんは嬉しそうな顔をする。 その笑顔にまたずきゅんとやられたので、やっぱりわたしは東堂さんのことが好きみたいだ。 140728 ×
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