ピンポーンとチャイムが聞こえたので東堂さんと視線を合わせた後、わたしの方が玄関側に近かったので「はあい」と返事をしながら玄関へ向かう。 覗き穴から覗くといつもの佐川のお兄さんだったので、シャチハタを持ってドアを開けた。 「ねえ東堂さん、すっごい大きい荷物来た!」 「ああ、今行くからそこに置いておいてくれ」 佐川の人が置いて行った荷物は二つで、一つはみかんの箱ぐらいで、もう一つは縦横共に1m以上あるんでは無いかという荷物だった。厚みはあまり無いので、一人で運ぼうと思えば運べる気がするのだがここは東堂さんにお任せしようと思う。 さっきまで来ていた半纏を脱いでやってきた東堂さんが、よっこいしょの掛け声と共に箱をリビングまで運んでいく。 「それ何?」 「何だと思う?」 「わたしのベッド」 「違う」 「え〜、じゃあ何?」 「”良い物”だ」 「やっと来た」とにこにこしながら段ボールを開けている東堂さんの姿を見て、そんなに良い物なのかと期待が膨らむ。ガムテープを剥がすのに苦労していたのでカッターを持ってきてやると喜ばれた。 東堂さんと一緒になって段ボールを解体していたのだが、出てきた物を見て思わず手を叩いた。 「こたつ!」 「当たりだ」 「どうしたの、これ」 「ネットで見てたら結構安くて。こう、ついな。春瀬さんも欲しがっていたし」 右手でマウスをクリックするときの動作をした東堂さんを見て思わず吹き出す。 一週間程前に、あまりの寒さに耐えきれず「この家こたつ無いの」と尋ね「そんなものは無い」と突っぱねられたのだが、その後まさか注文してくれていたとは。 東堂さん好き、と冗談めかして勢いでくっついてしまうぐらいには嬉しい。 こたつも嬉しいんだけど、わたしが言ったことを気にしてくれているのが嬉しい。 「ほら、引っ付いてないで組み立て手伝え」 「はあい」 言われて手伝っていたのだが、そういえばこのこたつはどこに置くのか。 どこにも置き場無くない?と東堂さんに尋ねると、ソファの前の机を片付けてそこに置くと言われたのでわたしはそっちを片付けることにした。 そこに載っていたテレビのリモコン達をソファの上に退けて、その机自体は折り畳みの簡単な物だったのですぐに片づけることが出来た。 代わりに収まるこたつに思わず顔がにやける。 「ねえねえ早速点けようよ!」 「ああ」 わくわくしながらコンセントを差して、電源を入れるとじわじわと暖かくなってくる。 長方形のこたつなので、ちょっときついが東堂さんと並んで入れるのが嬉しい。 「ねえ東堂さん何で正方形にしなかったの?わたしの隣に座りたかったから?」 「バカ、単純にソファとテレビの間の距離の問題だよ」 「でもちょっとはわたしの隣に座りたい気持ちもあったんでしょ?」 「お前ほんっとしつこいな」 隣で苦々しい顔になる東堂さんだが、にこにこしながら見上げると「あー、もうそれでいい」と照れ隠しにでこぴんを一発かました後そっぽを向いてしまった。 そういうところが年上なのにかわいくて、本気で好きになってしまったのにこういうからかい方ばっかりしてしまう。 女の人にモテる癖に女慣れしてなくって、わたしにもっと気を付けろと言う割には自分は無防備で、距離が近い。 ソファを背もたれにしながら、東堂さんの方に身体を傾けると「……他の男にはあんまりこういうことするんじゃないぞ」と言いながらもそのままにしてくれる。 「どーせまた甘えたな妹みたいだって思ってるんでしょ」 「何で分かった」 「ずっと一緒に生活してるから分かるんですう」 「そうなのか?」 「うん」 「俺は春瀬さんが何考えてるのか、まだあんまり分からないけどな」 「愛が足りないんじゃないでしょうか」 「そうか、愛が足りないのかもしれんな」 真顔でそう返されて思わず吹き出すと「春瀬さんが言い出した癖に」と不機嫌そうな顔をされる。 ねえ、東堂さん。”まだ”分からないってことはいつかは分かるようになるって期待しててもいいのかな。 170728 ×
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