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俺はその辺で時間つぶしてるから終わったら連絡するように!といつもの決めポーズをビシッと決めたまま去って行った東堂を見送り、本日のメインイベント『Tバック選考会』を開催しようとしていたのだが、アキちゃんと二人きゃっきゃと選ぶのは当然のように問題ないのだが、やっぱりこの男が参加するのはちょっと問題な気がする。絵面的に。
いまの子は彼氏と一緒に下着を選ぶなんてこともするらしいけど、こいつは別にわたしの彼氏な訳でもアキちゃんの彼氏な訳でもないからなあ……。


「せめてオネエのフリでもしてくれれば……」


ぼそっと呟いた一言に「ん?」と新開が反応する。
しかし新開がオネエ言葉でしゃべっている姿を想像したときのコレジャナイ感が半端無かったため、新開にはなんでもないと伝えると3人で再びランジェリーショップへと足を踏み入れた。





「とりあえず俺はレース付きのかわいいやつがいい」

「何でアンタが一番はりきってかわいいの選ぼうとしてんのか分かんないけど意見的には同じ」

「わたしはせっかくTバック買うんだからガチのセクシー系を買うのもアリだと思ってるよ」


店内を適当に物色しつつそれぞれの意見を言っていくと、いの一番に新開が口を開いたので、アキちゃんと二人何で女子二人を差し置いて一番最初に意見言ってんだ、どんだけはりきってんだよという目で見るが、Tバックを物色する新開の目が真剣すぎるので何も言えなかった。
一体新開は女物のTバックを買ったとしてそれをどうする気なんだろうか。
まさか自分が履く訳でもないし、部屋に飾るとか…?でも寮監さん来たときびっくりしちゃうよね。


「お、これかわいい」


新開が買った後のTバックがどうなるかを想像していたら一番積極的にTバックを物色していた新開がとあるパンツを手に取る。
彼の手の中にあったのは黒を基調とした布地の物で、透け感のある黒レースに大振りな薔薇柄、両サイドには少し大きめのリボンがあしらわれた物で、確かにかわいいし、大人っぽくもある。
思わずアキちゃんと「かわいい!」と褒めちぎれば「色も種類があるからこれにするか?」と新開は同じ柄で色違いのピンクと黄色と紫の物をチョイスして目の前に掲げた。
その姿がなかなか様になっていてまるで新開がこの店の店員さんのようだ。
さすがたくさんの女の子の下着を見てきただけあるなあとアキちゃんと感心しながら「これにしようかな」と頷くと「じゃあ俺ピンクがいい」と言うので、それにはさすがに黙っていられなかったけれども。


「やだ、ピンクはわたし譲れない」

「名前はピンクって感じじゃないだろ
万年ブラトップだし」

「今ブラトップ関係ない!全然関係ない!
わたしだって本気だしたらピンクとか余裕で着るし!」

「ピンクより黄色のが似合うと思うけどなあ、肌の色的に」

「そうやって具体的に似合うとか言われてもそれはそれで嫌だけどさ……」

「アキちゃんは何色がいいんだ?」

「わたしは紫でいいわよ」

「アキちゃん、新開に遠慮することないんだよ?アキちゃんだってピンク好きじゃん!」

「ピンク好きだけどたまには冒険してみようかと思って」

「でもアキちゃんは紫似合いそうだな」

「一緒に来た時点でアレだけどやっぱりそうやって具体的に想像されると嫌な感じね……」


アキちゃんと二人やっぱり友人の男とパンツなんて買いにくるもんじゃねーなと思ったが新開の様子を見る限りわたしたちのことを性的な対象として見ている気配がむかつくぐらいにないのでまあいいかとその件に関しては考えるのをやめた。
そんなことよりも今は新開とのパンツの色争いの方が大事だ。


「やっぱりわたしピンクがいい」

「俺だってピンクがいい」

「もうめんどくさいからジャンケンで決めなさいよ……」

「わかった」

「よし来い」

「せっかくだからじゃんけんの掛け声特別な感じにしようぜ」

「別に構わないけど特別な感じってどうやるの?」

「パンツ!ジャンケン!ジャン、ケン、ポン!みたいな。ポンのところで出す」

「すっごいどうでもいいけど新開がそれがいいならそれでいいよ」

「よし行くぞ、パンツ!ジャンケン!ジャン、ケン、ポン!」


ポン!でお互い勢いよく右手を出す。

新開がグーでわたしがチョキ。

わたしが膝から崩れ落ちるのと対照的にそのままガッツポーズをする新開。
アキちゃんは薄情なもので、「じゃあアンタ黄色ね」とさっさと黄色のTバックをわたしに差し出して自分はレジに並んでしまった。もうちょっと勝負の余韻みたいな空気大事にしてほしい。

140408

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