「お前またグラタンかよ……」 アキちゃんが委員会の会議の為、珍しくチャリ部3年のいつもの面々にお昼をご一緒させてもらうことになったのだが、寮内の売店で買ったグラタンを開くや否や荒北にケチをつけられた。 「またって言う程食べてないでしょ」 「お前一昨日もグラタンっつーかドリアみてーなの食ってたじゃねェか」 「えっ、荒北なんで知ってんの、こわっ」 最近はアキちゃんとばっか食べてるのに何で知ってるの、と尋ねれば「お前毎日昼飯ツイッターに載せてんだろ」と予想外のお返事が。 「荒北わたしのツイッター見てくれてんだね、なんかありがとう」 「たまたま昼見た時流れてるだけだっつーの、勘違いすんな」 「今のすごいツンデレのテンプレみたいなセリフだったな」 「やっぱ新開もそう思った?」 ここまでザ・ツンデレってセリフ久しぶりに聞いたよねと新開と顔を見合わせて笑っていると「心底ウゼェ」と吐き捨てられたが荒北の口が悪いのは今に始まったことじゃないので二人でスルーした。 「それにしても夏はカルビ弁当ばかり食べていたのに冬はグラタンとは極端だな」 「いや、福ちゃん。冬はさ、色んなことが億劫になるじゃない? もうね、お腹はすいてるんだけど食べたい気持ちに顎がおいつかない」 「まだ10代だというのにかわいそうだなお前……」 「10代の癖に納豆焼き魚漬物緑茶っていうじじくさいメニューばっかり食べてる東堂もどうかと思うけどね」 「しかも納豆に至ってはわざわざ安いスーパー探して大量に買い置きしてるくらいだからな」 「いいだろう別に。納豆は体にいいんだぞ」 「確かに、咀嚼が面倒臭くて柔らかい物ばかりを食べる名前よりは健康的だな」 福ちゃんの言葉にうんうんと頷く東堂になんだか負けた気持ちになり、確かに健康面で言えば負けたけどとぼそっと呟けばそれを耳ざとく拾った荒北がむしろ勝ってるのどこだよと茶々を入れてくる。 それに対して「……おしゃれ度?」と返せば荒北には「別にグラタンそんなおしゃれでもねーだろ」とつっこまれ、新開には「どうせならグラタンじゃなくてビーフストロガノフぐらい行っとけよ」と謎のアドバイスを受けた。 咀嚼がめんどくさいっつってんのに肉持ってくるあたり新開ほんと人の話聞いてないしそもそもそんなもの購買にも学食にも置いてないし、更に言えば絶対わたしが買ってきたやつつまみたいだけだと思う。一昨日のドリアも一口といいつつ結構奪って行った男を呆れたような目で見ていたら、 「しかし今からそれでは歳を重ねた時に困るだろう。将来総入れ歯になって硬い物が食べられなくなる前に食べれる物は食べておいた方がいい」 と福ちゃんからご尤もな意見を頂いた。 さすが寿一は良いこと言うなあと頷いている新開に、一昨日のドリアの恨みも込めて「じゃあ入れ歯になる前に新開のから揚げ食べるね」と言って目の前のから揚げを箸で掴もうとすると「じゃあ俺は名前のグラタン貰うな」と皿ごともってかれそうになったので、慌てて手を引っ込めた。 から揚げ1個と半分以上残ったグラタンをイコールとみなす新開の食思考は改めておかしいと実感した昼休みであった。 140324 ×
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