脇を見ると目に入るのは栗色の髪。それは授業中、良く居眠りする。もしくは、トシに嫌がらせするために呪いの儀式を行っている。または、トシのアドレスをばらまくために、せっせと準備をしていたりする。

そう、私の席と総悟の席は隣同士。
本来なら喜ぶべきことなんだろうけど、素直に喜べない。だって…。


「そーごっ!!」
「うおっ、若菜!?また来たんですかィ」
「何よー!!来ちゃ駄目なのー!?」
「んな事は無いですぜ」


総悟の彼女の鈴木さん。
最近、よく休み時間の度にZ組の教室に来るんだよね。総悟も嬉しそうだし、隣で見てるのは凄く辛い…。仲良く話してる2人は、何処から見てもやっぱり彼氏彼女で。平静を装っても、笑い合ってる2人を見る度に胸が締め付けられる。

うわ…どーしよ…。
泣きそう。

総悟に悟られないように、極力顔を見られないようにして教室を出た。




向かった先は屋上。ラッキーなことに先客は無し。
見上げた空の青が何時にも増して目に染みた。


『見せつけなくても良いじゃんか…』


ポツリと呟かれた私の声は、何も無かったかの様に消えていく。
目に水が溜まる感覚があったが、ギリギリの所でそれは零れなかった。泣くとスッキリするけど、目が腫れるし出来ることならあまり泣きたくない。

あー、もう授業サボっちゃおうかな…とボウッとする頭の中で考えた。
何か最近こんな事ばっかりだ。鈴木さんが来る度に、辛くなって逃げる私。こんなに辛いなら止めればいいのに。止められたらどんなに楽だろう。

始まりのチャイムが風に乗って下の方から聞こえた。

結局サボっちゃった。
そんなことを考えているとほぼ同時に背後から声が掛けられた。


「何浮かない顔してるの?ゆずちゃん!」
「幸せが逃げちゃうネ!」

声の主は妙ちゃんと神楽ちゃん。
いたずらっ子の様にニカッと笑いながら、私の隣に腰を下ろした。


『二人とも、どうしたの?授業は…?』
「鈴木さん…だっけ?あの人が来て、辛そうだったから」
「私、アイツ嫌いネ。同じ空気吸いたくないヨ」


妙ちゃんも神楽ちゃんも心配して来てくれたんだ…。

『辛そう、なんて…やだなぁもう』
「ゆずちゃん、気にすること無いわよ。あんな女、沖田くんも本気じゃないわ」「そうアル!!あのサドの女を見る目は毎回腐ってるネ!!」
『あははっ、別に気にしてなんかないって!』


精一杯の強がり。だって、弱い自分を見せたくない。

“本気じゃない”
これが本当だったらどんなに良いだろう。でも今回の彼女、鈴木さんとは一緒に帰ってる。今までに無かった行動。変化。


「…顔、引きつってるわよ」
「無理しなくて良いヨ」


私の思っていることを見透かしたような目で見つめる、妙ちゃんと神楽ちゃん。心に張ったバリアが崩れてく気がした。もちろん良い意味で。

…やっぱり敵わないなぁ。

『うん…』
「ま、取りあえずさっきの事は忘れましょ?折角授業サボったんだしね!!」
「そうアル、ゆず。笑ってないと損ネ!!」
『二人共…ありがと、ね?』


やっぱり良いよね、女友達って。これからもまた、頑張れる気がしてきたよ。

私、今日は泣かずに済みそうだ。



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