【幼馴染み】
 
子供の頃からの友達、仲良くしていた子




僕等はこの関係に

何度、喜んだだろう
何度、泣いたんだろう
何度、助けられたんだろう
何度、苦しめられたんだろう


一番近い筈なのに、一番遠かった
互いに想っていたのに、言葉に出来なかった
大切な物を壊したくなかった


月日を重ねる毎に、気持ちは募っていく
伝えたい、届かない、壊したい、守っていたい
矛盾する感情
進めない、僕等


伸ばした手は
届きそうで、届かない











「ゆずー、まだですかィ?」
『まって、後ちょっとで日誌書き終わる!!』


夕日が差し込む教室。窓の外では、散り始めの桜が夕日に照らされている。木には所々に緑の葉っぱが見え、見頃は終わり葉桜となっていた。

オレンジの教室に響く二つの声。


「しゃーねーな…、黒板消すぜィ?」
『うん、ありがと』


総悟と私は、俗に言う“幼馴染み”という関係。
そして、“好きな人”でもある。


マンションも隣だし、物心ついた時にはすでに隣に総悟が居た。気づけば毎日一緒に遊んでいたし、感覚としては髪の毛みたいにあって当たり前の感覚。
さすがに今となっては、其処までいかないけれど。
大きな存在だって事は変わらない。

そんな大きな気持ちでも、自分の気持ちを自覚したのは2年前だけれども。



『ねー、総悟。今日の晩ご飯さぁ、何が良い?』
「……肉食いてェ」
『・・・肉って・・・。もっと絞ってよ』
「んー、・・・アレだ、ハンバーグが良い」


私のお父さんは単身赴任、お母さんはバリバリのキャリアウーマン。総悟の両親は、世界を駆け回っている。小さい頃からお互い両親がいないことが多々あって、鍵っ子だった私達。寂しかったけれど、総悟がいれば何となく平気だった。

どちらの家の両親も、子供に捕らわれないとっても自由奔放な親なのである。
お互いの親の口癖と言えば、

“総悟くんと居れば大丈夫よね”
“ゆずちゃんが居るから平気よね”


何というデンジャラスな親たちだ…とは思うものの、今となっては感謝しなければならない。普段食事を共にする、という普通のクラスメイトだったら考えられない特権を私は持っているのだから。


『てか、挽肉あったっけ??』
「帰りに買ってけばいいだろィ』
『それもそうだね』


最初はただ単に、1人が寂しかったから。
でも今は一緒に過ごす理由が変わってきた。


今思うと、幼馴染みって特別だよね。
私の場合、無条件で一番近くに居られるから。
意識するようになって、終わりのない砂時計みたいに1分1秒毎に気持ちがどんどん募ってく。声とか、仕草とか、さりげない優しさとか。少しずつ、でも確実に積もっていく。

多分、総悟の事を一番知ってるのは私。
総悟の事、一番好きなのも私。

…そう思えるくらい好き。


けど…、どんなに想ったって、近くに居たって、この想いは届かない。



だって…。





ーチャラリラ♪

それはあまりにも幼稚な機械音。私をどん底に突き落とす音。


「あ、若菜」





・・・総悟には、彼女が居るから。




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