此処は何処だろう。

周りには家も木も何にも無くて。

在るのは足元に転がった沢山の死体。

其れは天人であれば普通の人間でもある。


…何で私はこんな所に居るのだろう。


其の時、後ろから突然現れた人影。

振り返った先居たのは、常に私の中心に存在した人だった。



『し…ん、すけ?』

「……た」

『えっ?』

「…俺は…遂にやり遂げた。松陽先生を奪った此の世をブッ壊してやったんだ」

『そ…っか。そうなんだ…』

「お前もこの世が憎かったろ?」

『憎かった…憎かったよ…』



でもね、晋助。

壊した所で失った人は帰って来ない。

逆に失うモノが増えるだけ。


…ねぇ、晋助。

本当に此れが貴方の望んでいた世界なの?

何も持たなくなった世界にどんな生きる意味があるというの?

どうして…失う辛さを知っているのにまた同じ痛みを味わおうとするの?



「クックック…あー、愉快だねェ」

『…本当にそう思ってる?』

「ったりめェだろ。松陽先生の仇がとれたんだからなァ…」



晋助は自分で気付いてないんだね。

その右目から涙が零れ落ちていることに。


だから私はその涙をそっと拭ってあげる。

今の私には其れくらいしか出来ないから。



「…全部無くなっちまった」

『うん』

「だけど…お前だけは失わずに済んだ」

『…うん』

「お前さえもを失ってたら俺は、今頃松陽先生の元に行ってたのかもな…」

『……』

「俺は…この世をブッ壊せて嬉しい筈なのに…其れに比例して何故か無性に虚しくなる」



晋助が初めて見せた弱い姿。

その小さくなった背中を私は強く抱き締める。

気の所為ではないだろう、晋助の肩が震えていた。


私も松陽先生の仇がとれて嬉しいよ。

だけど…その代償は少し大きすぎたみたいだね。








(だけどその知らせは私達に満悦よりも空虚を与えた)




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今回はシリアスな感じに仕上げてみました。
正直夢落ちで甘く締めようと思ったんですけど、結局シリアスで終わっちゃいました(笑)


2008.08.02 りく




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