「いただきまさァ」
『いただきます』


二人で手を合わせ、あいさつする。バラエティー番組なんかを見て、他愛のない話をしながら夜ご飯を食べるのがいつもの日常。
芸人の芸人のリアクションに、二人でケチをつけたり突っ込んだりして笑い合う。馬鹿みたいに下らないけど、総悟と二人で居られるから凄く幸せな気分になれるんだ。

学校じゃこうは行かないしね…。


「あ、そうそう。来月、体育祭があるらしいですぜ」
『うわっ、マジでか…。嫌だなー…』
「ゆずは鈍くさいですからねィ。苦手っつー訳じゃねーのに変だよな」
『うっ煩いなぁ!!良いよねー総悟は!!運動得意だもんねー!!』
「まぁねィ」
『うわ、否定しないとこがむかつく…』


別に走るのが苦手っていう訳じゃないのに、何か駄目なんだよね。
総悟とかトシには良く鈍くさいって言われる。


『一番嫌なのは二人三脚だよ…絶対相手の人に迷惑掛けちゃう』
「パートナーに同情しやす」
『うー、やっぱお願いするとしたらトシかなぁ?』

「…野郎は止めろィ」
『へ…?』


総悟の顔がいきなり真剣になったから少し驚いた。声のトーンも確実に下がっていてドキッとした。

…けれど、次の瞬間には私の額にデコピンがお見舞いされていて。総悟の顔からは真剣な色は消え去っていた。


『痛いじゃん!!』
「いっけね、手ェすべっちまった」


お茶目に笑いながらも、私の反応を楽しんでいるコイツはやっぱりSだと思った。うん、楽しそうに笑っている。いつもの総悟だ。


「ははっ、悪ィ悪ィ。でも、そんな心配することないと思いまさァ」



いつの間にかご飯を食べ終わった総悟はポン、と私の頭に手を乗せて台所に食器を置きに行ってしまった。何についての心配?体育祭かな?


ゆずも早く食べなせェ、と台所の方から急かされ、食べるスピードを上げる。
ブラウン管の入った箱からは、笑い声やら何やら聞こえてくるけど、私はこのゆったりとした時間が好き。彼女じゃないけど、一番近くに居られるこの時間が。
こういう時は、本当に幼馴染みで良かったって思うよ。こういう時ばっかりね。矛盾してるかもしれないけど。


今日の夜空は晴れているかな。よし、食べ終わったらカーテンを開けて覗こう。

『総悟、明日は何食べたい?』
「辛いもん」


ありきたりなことを聞いてみる。きっとこんな時間も何時か終わりを迎えるんだろう。

明日は何食べたい?
明日も一緒に食べようね、って事だから。




狡くてごめんなさい。

なんて意味もなく心の中で謝ってみたりした。



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