「いいかァァァ、お前等!!体育祭、絶対ェ優勝しろよー。俺の臨時ボーナスがかかってんだかんなー」
「先生ー、それ僕たちに何の利益も無いと思います」「そうアルよ!!銀ちゃんばっかり卑怯アル!!」
「そうよ!!最低ー!」
「ろくでなしー」
「糖分バカー」
「死ね土方ー」
「てめっ!!総悟ォォォォ!!」
「あーあーあー、分かったよ。臨時ボーナスが出たら何か奢ってやっからよ。(1人200円以内でな)」

「「「「よっしゃァァ!!」」」」

「よっしゃ、景気づけのために一丁やっとくか。
3年Z組ィィィ、絶対ェ優勝!!」

「「「「オォォォォォー!!」」」」




青空に雲はぷかぷか浮いている。
ある晴れた日の、HRの出来事であった。


放課後だというのに、グラウンドはすっからかんだ。
普段なら、何処かしらの運動部が使っているのに今日は貸し切り状態。
それもそうだ。校内でも色々な意味で有名な3zが体育祭の練習をすると言うのだから、どの部活も逃げたくなるだろう。要するに、関わるとろくな事が無いというのを知っているのだ。
問題児がわんさか、というより全員が問題児な3z。何かしらやらかすのは目に見えたことだ。
まっ、俺も色々やるけどな。土方暗殺とか、土方殺害とか、土方抹殺とかな。


『総悟っ!紐貰ってきたよー』
「おう、準備が良いねィ」
『それにしても、良いの?…私で』
「何が?」
『二人三脚…。足引っ張っちゃうしやっぱトシとの方が…』
「へぇー、ゆずは俺とやりたくねェってのか」
『ううん、違うけどっ…』
「じゃあ良いじゃないですかィ。大体、俺が無理矢理組んだんじゃねーかィ」


この前、ゆずの家で話した通り、ゆずはやっぱり野郎に頼もうとしていた。
それがあまりにも気にくわなかった俺は、無理矢理ゆずと組むことにしたのだ。
ゆずは迷惑掛けるとか言ってるけど、もっと俺を頼れっつーの。野郎なんかじゃなくて。
例え、ゆずと組んで遅くなったとしても俺にしてみれば役得だ。一緒に居ていい理由になる。
…忘れると言っている自分に対しての言い訳。


紐で足を縛るわけだから、体は何時も以上に密着してるわけで。
ゆずの香りとか、体の小ささとか、柔らかさとか。嫌でもリアルに分かっちまう。嫌らしい感じじゃなくて、ゆずってやっぱり女なんだと当たり前なことを実感した。


『総悟、いちにーいちにーで良いよね?』
「ん、あぁ」
『タイミングさえ合えば私も平気なはずだよね…』


集中しろ、俺!!
何か普通にゆずのところが好きみたいな思考じゃねーか。俺は忘れなきゃいけない立場なんだから。


『せーのっ』

いち、にー、いち、にー…
「おっ、中々やるじゃねーですか」
『うんっ!!よっ、この調子なら大丈夫かもっ…キャッ!!』
「うおっ…」









「何つーか、お決まりなパターンでさァ」
『うぅ…面目ないです』


お決まりな俺等の行った先はもちろん保健室。手当てしてもらおうと思ったが、高杉のヤローはどっかに行っていない様だった。

幸いにもゆずは少し手と膝を擦り剥いただけですんだので、その場所に絆創膏を貼ってやる。


『あっ!!総悟、ハチマキ落としたよ』
「ん?あぁ」


ポケットに入れておいたハチマキが落ちたらしかった。
水玉柄のハチマキ。たしか、志村姉と柳生の奴のお手製とかっつってたな。


『総悟はしないの?コレ』

ゆずを見ると、髪を結んだゴムの上にハチマキをしていた。


「んー、ぶっちゃけハチマキ自体面倒くせー」
『そんなこと言っちゃ駄目だって!ハチマキって凄く大切なんだよっ!!』
「鬱陶しくないですかィ?」
『だって、ハチマキが無かったらハチマキ交換できないじゃん!』
「何でィ、それ」
『好きな人と、ハチマキ交換すると結ばれるとかってやつ。知らない?』
「そんなんただの迷信だろ」
『駄目だな〜総悟。乙女心が分かってないね。女の子の憧れなんだよ〜』


目をキラキラさせて言うゆずを何だか可愛いと思ってしまった。
そんなんで結ばれるんだったら、苦労しないのによ。
自分の手に握られているハチマキを見る。ポケットに突っ込んでた所為もあって少しシワが出来ていた。

…出来心、と言うのだろうか。


ゆずの髪のゴムに縛られていたハチマキをシュルシュルと解く。


『総、悟…?』
「よく見るとゆずのハチマキの方が綺麗じゃねぇですかィ。…交換な」

『え?ちょっ』
「俺先に校庭戻ってまさァ。ゆずも早く来なせェ」


無理矢理ゆずに俺のハチマキを握らせ、保健室を後にした。

ドアを閉めた後、廊下の壁にもたれ掛かって深呼吸。一気に体の力が抜けた。
手にはゆずのハチマキ。


俺はゆずが好きだ。前々から言ってたけど、改めて認める。
忘れるのも無理って事が分かった。正確には分かってた。

…だから、隠し通す。
溢れないように心の底に抑える。



“足引っ張っちゃうしやっぱトシとの方が…”


カッコ悪ィ。
たったこれだけの言葉に傷ついてる自分がいた。



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